口上

掌(阿修羅考)③

先日、修学旅行で2年ぶりに興福寺の阿修羅像と対面してきました。たまたま国宝館に入ったタイミングが良かったらしく、ほとんど人がいない空間でじっくり鑑賞することができました。やはり本物は素晴らしく、向き合っていると胸騒ぎがするほどでした。さて…

掌(阿修羅考)②

明治の半ばに撮影された興福寺の写真には、当時の仏像をめぐる痛ましい状況が記録されています。今でこそ日本の至宝として大切に展示されている像たちが、廃仏毀釈の時流の中で、ガラクタの様に寄せ集められています。八部衆や法相六祖坐像、金剛力士像や運…

掌(阿修羅考)①

制作中 高さ(頭頂まで)48cm 修学旅行の事前学習用に「阿修羅」をつくることにしました。脱活乾漆像の構造を理解してもらうため、中空の上半身を実物の2/3サイズで成形してみました。但し、材の麻布こそ同じですが、この像に漆は使っていません。漆の乾くの…

続・立春

この像は制作中の7つとは別です。あくまでも手直しなのですが、それにしては修正前と大分顔つきが変わりました。こうしてみると、どの作品も永遠に完成などできないのかもしれません。 机の上の変な形の頭は阿修羅像のつくりかけです。修学旅行の事前学習で…

立春

このところずっと小さな水彩画ばかり掲載していましたが、安心してください。やってますよ、彫刻も。気がつけば、大小合わせて7つを同時進行でつくっています。もう大体削り終わって漆を塗るばかりのものから、芯だけのものまでいろいろですが、暖かい季節…

絵画と写真

2015年 15cmx22cm 紙、鉛筆、水彩 絵画と写真には、複眼と単眼による捉え方の違いが表れるようです。絵画では、物の左右の範囲はもちろん、奥行きや上下についても、両眼の微妙な高さの差から、多少拡張される傾向があります。さらに、当然のことながら…

草枕

この夏は「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で」(水村美苗著、ちくま文庫)がきっかけで、夏目漱石三昧です。「三四郎」「それから」「門」「こころ」「草枕」と来て、いま「彼岸過迄」を読んでいます。東京はここのところバカに暑い日が続き、とてもじゃ…

チームに加わるということ

副校長から学校だよりに原稿を書いてくれないか?と言われたので、今週書いて出しました。そう言えば、転勤したままで挨拶状も作っていなかったので、ここにも載せて、私の近況報告代わりにしたいと思います。ちょうど、就職した頃に画材で散らかった自分の…

片づけ

3月に14年間慣れ親しんだ美術室の片づけをしました。自分では機能的に整理していたつもりでしたが、さすがに年月の堆積は凄まじく、すっかり忘れていたものが次々出てきて弱りました。春休み中の何日間か、朝から晩までかかって余計なものを捨てまくり、完璧…

藤本さん

http://d.hatena.ne.jp/murakami_tsutomu/20121208 あさごの彫刻家・藤本イサムさんご夫妻と娘さんの作品展がさいたま新都心で始まりました。昨日は午前中 学校公開だったので、午後から出掛けました。会場は、24日にオープンしたばかりでごった返している…

もののあはれ

http://d.hatena.ne.jp/murakami_tsutomu/20110222 多分周りは皆、気を遣ってくれているのでしょうが、思いの外ストレスもなく、新しい職場で過ごしています。自分ではあまり意識していなかったのですが、いつの間にか重荷を下していたようで、明らかに体調…

新天地

http://d.hatena.ne.jp/murakami_tsutomu/20110416 この春から新しい環境に身を置くのは私だけではありません。3月に送り出した卒業生も進路先での生活をスタートさせているはずです。そして、今年は私の周りで例年になく、たくさんの知り合いが退職して新…

加賀屋

先週の金曜日に3年間受け持った生徒たちの卒業式を終えて、土日で和倉温泉〜金沢に行ってきました。せっかくのご褒美旅行なので、いつも(三鷹)の加賀屋ではなく、あの「おもてなし」の豪華旅館・加賀屋に泊まろう!と学年の教員総勢9人で出掛けました。…

宴会

先週は(水)(金)(土)と宴会続きでした。最近は調子に乗って飲むとダメージが大きいので控えめにしていますが、それでもしばらく睡眠不足気味でした。 どうも私は情に乏しいせいか、他の人より「懐かしさ」を感じにくいのかもしれません。記憶はあるので…

休戦

2015年 高9.8cmx径11.6-12.8cm 飽きっぽい私の熱が冷める前に、有名な志野茶碗「卯花墻」を写してみようとしたのですが、やはりそう簡単にはいきません。外寸だけはかなり実物に近いものを作れるようになりましたが、釉色や風合いが全然違います。長石の…

井戸茶碗をつくる

枇杷色に焼き上がる鉄分を含んだ土は、亀裂が入り易く、かなり成形に気を遣います。轆轤の上で土取りをして、親指を差し込んだ途端にヒビが入り始めるので、他の指でならしながら少しずつ広げ、持ち上げていきます。かと言って、常に遠心力が加わった状態で…

失敗 

洋菓子のシュガーコーティングが剥がれるように、無残に焼き上がった志野茶碗です。何らかの原因で釉薬が定着せず、こうなってしまいました。同じ土、同じ釉薬を使っているのに、微妙な加減で上手くいったり失敗したり、やはり窯場には神棚が必要な訳です。…

2015・年賀

明けましておめでとうございます。今年はちょっと変わった正月飾りでスタートです。あさごアートコンペティションから戻ってきたボブ・ディランが場所塞ぎなので、人から貰ったミニ門松を置いてみました。これが玄関の正面にいると、宅配便のお兄さんもびっ…

最近読んだ本②

『欅』2008年 19cmx14cm 墨、木版画 ・『自分の壁』養老孟司(新潮新書2014年)…あとがきに記してあるように、『バカの壁』や『死の壁』同様、口述による本です。著者自身認めていますが、プロの編集者がまとめた本は、独りで原稿を煮詰めていったものよ…

最近読んだ本①

昨晩、仲間と一杯やりながら、本の話になりました。世間では皆、必要な教養や知識を身に着けるために、読書の大切さを言いますが、私にとってはあくまでも娯楽です。本によって、面白いことを考える道筋に光が射すことはありますが、だから頑張って読まなき…

テレビ

先日、「ちょっと、これ知り合いじゃないの?」と家族から呼ばれてテレビを観ると、明石家さんまの番組に「元プロボクサーの彫刻家」として、前原冬樹が出ていました。プロフィールの紹介だけかと思いきや、スタジオに本人が登場し、相変わらずの調子で芸人…

朝倉彫塑館

先週末、上野まで知り合いの公募展を観に行ったついでに、谷中の朝倉彫塑館を訪ねました。彫刻家朝倉文夫と言えば、2012年秋に私が彫刻作品「ロダン」を出品した、大分アジア彫刻展が開催されたのが大分県豊後大野市の朝倉文夫記念文化ホールでした。「…

空間と作品 ④

今からちょうど3年前、初個展の時には、あさご芸術の森美術館の約150㎡のスペースを自由に使って良いということだったので、まず工作用紙で1/50の模型を作って頭の中の設計図を固めていきました。もちろん展示作業の段で臨機応変に変えたところもあり…

空間と作品 ③

彫刻を展示する時、スペースの広さにも増して天井の高さは重要です。頭の上に充分な空間があると、隣の作品との距離が少々近くても、それ程気になりません。我家は1階に置いたペレットストーブで家全体を暖めるため、1・2階の間に断熱材を挟んでいません…

空間と作品 ②

凡そ住宅に具象彫刻ほど無用のものはない気がします。同じ美術品でも、名作家具やイサム・ノグチの「あかり」のような、使える作品ならともかく、彫像など役立たずで場所ふさぎなだけです。私の作品も生活空間に置かれることはあまり想定していませんでした…

空間と作品 ①

11年前に我家を建てた時、限られた条件の中でしたが、家の全体像を含めたかなりの部分で自分の描いたスケッチを実現してもらいました。一階を作業場兼宴会場のやや広いスペースにしたいとか、ペレットストーブを導入して家全体を暖める構造にするとか、盛…

2014クラプトン日本公演

ツアー初日の2月18日、日本武道館に行ってきました。初めてクラプトンのコンサートを観たのは、やはり武道館で『アンプラグド』の大ヒット凱旋ツアーでしたから、もう20年以上前になります。色々世話になった新潟の友人と聴いた、クリーム時代の名曲『…

台について ⑦

週末ごとに大雪で大変です。昨日は、普段なら駅から30分のところを50分かかって歩き、頭からつま先までずぶぬれで職場に着きました。温暖化が言われて久しいですが、本当か?という感じです。実際、科学者の中には本気で地球温暖化でなく、寒冷化の方を…

台について ⑥

展覧会では、彫刻の大きさによって観る人と背丈を合わせるために、いろいろな高さの台が必要になります。70cm位の胸像であれば、だいたい1mの台といった具合です。美術館や画廊にも適当な高さの台は用意されていますが、木彫やブロンズの色を損なわないよ…

本阿弥光悦 ③

今でこそ寺という体裁をとっていますが、光悦寺は本阿弥光悦晩年の住居です。果たして400年前の姿がどれだけ残されているのかはわかりません。現在は美しい庭園の中に7つの茶室と光悦やその子光瑳、孫光甫の墓などがゆったり配置されています。家康から…