枯れる海

2026年 53cm×80cm×55cm 麻布、樹脂、漆、アルミ、流木、他

 何年か前、由比まで旬の桜海老を食べに行った時に寄った美保の松原で、一抱えもある流木を見つけました。駐車場から離れていたので、どうしようか迷ったのですが、砂浜高く打ち上げられていて、殆ど乾いていたので、担ぎ上げて持ち帰りました。その時はまだ何に使うか考えていませんでしたが、取り敢えず大きなビニール袋に大量の樟脳と共にぶち込んで密閉し、2〜3年そのまま置いておきました。

 昨年、いくつかカラスの彫刻をつくるうち、部屋の隅にあった大きな流木にふと目がいき、この上にも一羽乗せてみようかな、と思いつきました。前二つハシブトガラスを拵えましたが、今回はハシボソです。汐風にやられた様な嗄れた声で鳴く、ハシボソガラスの方がこの台座には相応しい気がしました。

鋸山から南の海を望む

2026年 32cm×41cm 紙、鉛筆、水彩

 学校行事の振替の月曜日休み、千葉の鋸山(のこぎりやま)に行きました。ここは昔、臨海学校で館山に向かう途中、観光バスごとフェリーから下船した金谷港に面しています。今や臨海学校で遠泳などやる中学校は(多分)ありませんが、20世紀までは当たり前の様に計画実施されていました。毎年、生徒引率をしながら、バスの車窓から眺めていたギザギザの岩山にいつか登ってみようと思っていましたが、実現しないままこの歳になっていました。まだ体力に問題はないのですが、せっかくロープウェイがあったので、汗をかかずに登山は済ませ、山頂で一枚絵を描くことにしました。

 海は空を映して鈍く輝いていました。雲が多く、水平線もあまりはっきりしません。一番奥に左から伸びているのが館山の洲崎だと思います。右側に目を転じると、正面が浦賀水道で、三浦半島はすぐ前に見えます。最近は観音崎や城ヶ島からこちらを眺めることが多かったのですが、久しぶりに反対側に立ちました。小一時間スケッチした後、浜金谷港の食堂で(少し並んで)素晴らしく美味いアジフライを食べて帰りました。

三毛猫

2025年 45cm×30cm×70cm 麻布、樹脂、漆

 前玉神社の主みたいな顔をして歩く「サクラ」の像をつくりました。三毛と言っても、黒や茶の部分が縞になっている、所謂「キジミケ」で、人を怖がりもしないかわりに自分から寄ってくることもない、マイペースの雌猫です。餌の時だけ社務所に顔を出し、腹が満たされたら、また自分だけの隠れ家に戻って日向ぼっこしながら寝そべっている、太々しい奴です。そう言えば、うちにも一人、似た様な社会人の娘がいました。

 拵えてみてわかりましたが、猫というのは全ての足をほぼ一直線上に運ぶので、歩きながら絶妙なバランスを保っているのです。なるほどこうしておけば、塀の上も歩けますし、咄嗟の場合には左右どちらへでも飛び退くことができる訳です。四つ足の像なんて簡単だと思っていましたが、どうして、二足の等身人物像を立てるよりも余程難しいことに気づいたのでした。

千體地蔵堂・五月晴れ

2026年 25cm×33cm 紙、鉛筆、水彩

 最近気に入っている東村山の蕎麦屋で昼食の後、少し時間があったので、正福寺に寄ってみることにしました。千體地蔵堂は何度もスケッチしているし、別にこの日は描くつもりもなかったのですが、綺麗な空と新緑に誘われて、やっぱり絵具とスケッチブックを車に取りに行きました。でき上がった絵は前に描いたものと変わり映えがしませんが、それでもこの日この時だけの記録であることは間違いありません。結局、絵というのはそれ以上でもそれ以下でもないのだと思います。

神代植物公園のバラ園

2026年 33cmx25cm 紙、鉛筆、水彩

 GW後半、今年も遠出はできなかったので、近場の神代植物公園に行きました。開門時間よりだいぶ早く着いたのですが、既に入園の行列ができていました。吉祥寺や調布からやって来る満員のバスからは、次々に新たな人波が吐き出され、我々の後ろの列はみるみる伸びていきます。植物園の職員も慣れない混雑にてんてこ舞いといった様子でした。

 大勢の目的は見頃を迎えたバラ園です。朝一のバラの色と香りを求めて、主に年配の(朝に強い)人達が押し寄せてきます。我が家も知人から立派な鉢を頂いたことをきっかけに、少し前から新規参入しました。ここはバラの育て方の研修所みたいなもので、種類ごとの枝の切り方や葉の取り方を実地で学べる貴重な場でもあります。ただ眺めて「綺麗だねー。」と記念撮影する人に混じって、バラ研究者、或いは修行僧も相当数いそうでした。

 バラの庭園に面した藤棚の下のベンチが空いていたので座りました。バラ園なんて絵にならないと思っていたのですが、ここから見た空、遠くの木々、芝生、バラの花壇という、帯のストライプが面白かったので、描いてみました。陽の光を浴びた花はもっと鮮やかでしたが、持っていた水彩絵具ではこれが精一杯です。昼が近づくにつれてバラ以上に人が溢れてきたので、諦めて切り上げました。