梅雨の晴間

2026年 33cmx25cm 紙、鉛筆、水彩

 午前中降り続いた雨が夕方にはあがり、分厚い雲の合間に青空がのぞき始めました。2階の美術室の狭い窓から見える東の空と学校の玄関を描いているうちに、日が照ってきました。あまり気が進まなかった夜の遠出も、この天気のお陰で楽しみになってくるとは、人間たわいないものです。

 この日の晩、40年前に勤めた初任校の卒業生たちとの会があり、はるばる蒲田まで出掛けたのでした。平日遅くの集まりで、次の日も朝から授業だったので、結局あまり長居はできませんでしたが、懐かしい顔にたくさん会えて、とても良い時間でした。

 今年の梅雨は、朝の出勤時に降り、その後晴れる結果、傘を忘れて帰るパターンが多い気がします。でも、その逆よりはずっとマシです。疲れて帰る時になって雨だと、気が滅入ります。この絵も雨のち晴で、重たい雲が広がる景色にしては軽く明るく仕上がりました。

枯れる海

2026年 53cm×80cm×55cm 麻布、樹脂、漆、アルミ、流木、他

 何年か前、由比まで旬の桜海老を食べに行った時に寄った美保の松原で、一抱えもある流木を見つけました。駐車場から離れていたので、どうしようか迷ったのですが、砂浜高く打ち上げられていて、殆ど乾いていたので、担ぎ上げて持ち帰りました。その時はまだ何に使うか考えていませんでしたが、取り敢えず大きなビニール袋に大量の樟脳と共にぶち込んで密閉し、2〜3年そのまま置いておきました。

 昨年、いくつかカラスの彫刻をつくるうち、部屋の隅にあった大きな流木にふと目がいき、この上にも一羽乗せてみようかな、と思いつきました。前二つハシブトガラスを拵えましたが、今回はハシボソです。汐風にやられた様な嗄れた声で鳴く、ハシボソガラスの方がこの台座には相応しい気がしました。

鋸山から南の海を望む

2026年 32cm×41cm 紙、鉛筆、水彩

 学校行事の振替の月曜日休み、千葉の鋸山(のこぎりやま)に行きました。ここは昔、臨海学校で館山に向かう途中、観光バスごとフェリーから下船した金谷港に面しています。今や臨海学校で遠泳などやる中学校は(多分)ありませんが、20世紀までは当たり前の様に計画実施されていました。毎年、生徒引率をしながら、バスの車窓から眺めていたギザギザの岩山にいつか登ってみようと思っていましたが、実現しないままこの歳になっていました。まだ体力に問題はないのですが、せっかくロープウェイがあったので、汗をかかずに登山は済ませ、山頂で一枚絵を描くことにしました。

 海は空を映して鈍く輝いていました。雲が多く、水平線もあまりはっきりしません。一番奥に左から伸びているのが館山の洲崎だと思います。右側に目を転じると、正面が浦賀水道で、三浦半島はすぐ前に見えます。最近は観音崎や城ヶ島からこちらを眺めることが多かったのですが、久しぶりに反対側に立ちました。小一時間スケッチした後、浜金谷港の食堂で(少し並んで)素晴らしく美味いアジフライを食べて帰りました。

三毛猫

2025年 45cm×30cm×70cm 麻布、樹脂、漆

 前玉神社の主みたいな顔をして歩く「サクラ」の像をつくりました。三毛と言っても、黒や茶の部分が縞になっている、所謂「キジミケ」で、人を怖がりもしないかわりに自分から寄ってくることもない、マイペースの雌猫です。餌の時だけ社務所に顔を出し、腹が満たされたら、また自分だけの隠れ家に戻って日向ぼっこしながら寝そべっている、太々しい奴です。そう言えば、うちにも一人、似た様な社会人の娘がいました。

 拵えてみてわかりましたが、猫というのは全ての足をほぼ一直線上に運ぶので、歩きながら絶妙なバランスを保っているのです。なるほどこうしておけば、塀の上も歩けますし、咄嗟の場合には左右どちらへでも飛び退くことができる訳です。四つ足の像なんて簡単だと思っていましたが、どうして、二足の等身人物像を立てるよりも余程難しいことに気づいたのでした。

千體地蔵堂・五月晴れ

2026年 25cm×33cm 紙、鉛筆、水彩

 最近気に入っている東村山の蕎麦屋で昼食の後、少し時間があったので、正福寺に寄ってみることにしました。千體地蔵堂は何度もスケッチしているし、別にこの日は描くつもりもなかったのですが、綺麗な空と新緑に誘われて、やっぱり絵具とスケッチブックを車に取りに行きました。でき上がった絵は前に描いたものと変わり映えがしませんが、それでもこの日この時だけの記録であることは間違いありません。結局、絵というのはそれ以上でもそれ以下でもないのだと思います。