片づけ


 3月に14年間慣れ親しんだ美術室の片づけをしました。自分では機能的に整理していたつもりでしたが、さすがに年月の堆積は凄まじく、すっかり忘れていたものが次々出てきて弱りました。春休み中の何日間か、朝から晩までかかって余計なものを捨てまくり、完璧ということはないにせよ、すっきりと使い易い部屋にはしてきたと思います。
 ところが、ようやく引っ越し荷物をまとめ、新しい職場に運んで行って、目を疑いました。美術室は兎も角、準備室が爆撃されたハモニカ横丁みたいな有様でした。これはもう、前の管理人がどうだった、とかいうレベルじゃありません。何代にも亘って、片づけを先延ばしながら我儘に物を増やしていった結果が、まるでコウモリの糞のように、中に入った人を蝕む「呪い」と化していました。ずっとそこにいると、充満した負のパワーにやられてしまいそうなので、時々気晴らしに校内巡回をしながら、仕方なくまた片づけを始めました。
 幸い、学校はとても落ち着いていて、気持ちよくメンバーとして受け入れてもらえたので、他にストレスもなく、笊(ザル)で水を汲むような虚しい作業に向かえました。初めはどこから手を付けたものか困り果てましたが、「ふざけんなよ。」と毒づきながら、目についたところから取り掛かるしかありません。色々な道具や材料は、棚の表示とは全く関係なく、あちこちから出てきます。なんでこんなものが?というゴミが溢れているかと思えば、瓦礫の中に未使用の教材が大量に埋もれている、といった具合です。原則や秩序を見い出せないモノの配列には悪意すら感じられます。今まではテレビで特集しているゴミ屋敷を他人事のように観ていましたが、まさか自分がその住人になってしまうとは思いもよりませんでした。
 美術室と準備室を合わせると、ほぼ80畳になります。それだけ広い場所を一人で片づけるというのは、かなり途方もない企てではありますが、大きな作品をつくることに比べれば、ゴールがイメージできるだけ楽です。足の踏み場がなかったところに少しずつ床が見えてくると、勇気も出てきます。さあ、もうひと頑張りして、不必要なアドレナリンが分泌されない日常を手に入れたいと思います。