最近読んだ本①

 昨晩、仲間と一杯やりながら、本の話になりました。世間では皆、必要な教養や知識を身に着けるために、読書の大切さを言いますが、私にとってはあくまでも娯楽です。本によって、面白いことを考える道筋に光が射すことはありますが、だから頑張って読まなきゃいけないと思ったことはありません。
 さて、本の話題なので、最近、読んだ中から印象に残ったものをいくつか記してみます。

『学生との対話』小林秀雄(新潮社2014年)…同じく新潮社から出ている小林秀雄の講演会CDで聞いたことのある内容ですが、本で読み返してみても退屈しません。行間から肉声が甦ってくるようです。やはり小林秀雄は特別です。
養老孟司の大言論『Ⅰ・希望とは自分が変わること』、『Ⅱ・嫌いなことから、人は学ぶ』、『Ⅲ・大切なことは言葉にならない』養老孟司新潮文庫2014年)…9年間にわたって雑誌に連載されていたものなので、重複する言い回しや少々投げやりに見える展開もありますが、その中にいくつかの重要な執拗低音が流れています。例えば、著者は人間の精神を形作る対称的な要素として、「意識」と「感覚」を挙げます。「意識」は常に共通項を探る働きをし、「同じ」というくくりでもって、このリンゴ<リンゴ一般<果実<植物<生物…という様に抽象化を進めていきます。そうなると、最終的に意識が行きつくのは「神」という概念になります。対して「感覚」とは、基本的に「他と違う」かどうかを見極める働きのことであり、例えば腐ったリンゴを「これはおかしい。」と峻別したりする、言ってみれば生物が身を守るための能力です。大切なことを判断する時、意識よりも感覚を優先する傾向の強い日本人に、一神教が馴染みにくいという説明には、なるほどと思いました。
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀・松村卓(ディスカヴァー携書2014年)…武道家とスポーツトレーナーの対談本です。ウエイトトレーニングの危険性や体幹の力を引き出す方法など、要点を絞って書かれています。精神と身体をそれぞれ独立したものと捉える「心身」という表記がそもそもおかしいのだという意見には説得力があります。
一神教と国家 イスラームキリスト教ユダヤ教内田樹中田考集英社新書2014年)…ジハードとかタリバンとか、本来の意味からかけ離れた言葉は独り歩きし、狂信的な集団が紛争に明け暮れているというイメージは、アメリカ主導のグローバリズムが垂れ流すプロパガンダなのかもしれません。この本を読んで、本来イスラム教が持つ博愛的、超国家的性格がよくわかりました。ただ、中東は世界のエネルギー=経済を左右する舞台なだけに、各国の思惑が渦巻き、ムスリムの足並もバラバラになっている実情があります。どちらが正しいとか間違っているとかでは片付かない、難しい問題が世界には溢れています。
『百歳の力』篠田桃紅集英社新書2014年)…20年以上前に友達の画家?磯部氏から教えてもらって、篠田桃紅(しのだ とうこう)の名前や作品は知っていましたが、100歳になった今も現役で制作していたとは驚きでした。この本の中でご本人が謙遜して語る通り、自伝のような仰々しいものではありませんが、常に前向きで、時に無鉄砲と思えるような真っ直ぐな生き方をを屈託なく振り返っています。爽やかないい本です。
 しばらく目の調子が悪く、細かい字に難儀して、内容も頭に入りにくくなっていました。(ただ、視力検査を受けると具合の悪い方の右眼で1・0、左眼に至っては表の一番下まで見えるのです。)疲れるので無意識に印刷物を避けていましたが、先日、ショッピングセンターで何気なく眼鏡をかけてみてびっくり。細かい字まではっきり見えます。何と、私の活字離れの原因は老眼でした。早速、色違いの老眼鏡を3つ買って帰りました。