失敗 


 洋菓子のシュガーコーティングが剥がれるように、無残に焼き上がった志野茶碗です。何らかの原因で釉薬が定着せず、こうなってしまいました。同じ土、同じ釉薬を使っているのに、微妙な加減で上手くいったり失敗したり、やはり窯場には神棚が必要な訳です。器胎が完全に乾く前に、ちょっと施釉を焦ったかもしれません。
 さて、このページで作品として発表している写真の裏には、星の数ほど失敗作があります。モノによっては恐ろしい数の分母だけあって、上手くいった分子が一つもない、なんてことさえあります。それでも作り続けるためには、殴られても立ち上がる元気と、何でも都合よく解釈する無神経さが大切です。
 美術を教えていると、光るものを持っている生徒は少なからずいます。が、彼らが皆、美術の世界で生きていけるかどうかは別問題です。普通の人は、評価も見返りもない荒野でずっと単純労働を繰り返すより、もっと効率よく満足することを見つけます。もしかすると洒落た絵を描くセンスよりも、根拠のない自信を貫く図々しさの方が、本当に必要な美術的才能なのかもしれません。