口上
この夏休み丸々開催した「夏のアートキャンプ」展が9月1日(日)で終わりました。休館日を除く36日間で一万人を越える来場者があったそうです。今年は酷暑と台風、おまけにオリンピックという悪条件が重なったにも関わらず、たくさんの方にお運びいただき、あ…
Schoolの語源はギリシャ語のskholē(スコレ=余暇、自由時間のこと)だそうです。有閑階級のギリシャ人にとって、余暇とは学んで教養を高めるための時間のことでした。それが転じてラテン語のschola(學校)になったということは、つまり夏休みこそ學校の本…
Ⅳ「學校」 1968年の夏、小学一年生の私は東京から広島に転校しました。不謹慎に聞こえるかもしれませんが、初対面の原爆ドームの静かに佇む姿は、圧倒的にカッコよく見えました。幼い私の中に歴史的なモノが意識された、最初の経験でした。 さて、これは建築…
Ⅲ「ゾンビ・ピカソ」 ピカソは私にとってリピート率No.1のモチーフです。つくるものに行き詰まると、無意識のひだの中から蘇ってくるゾンビの様に、眼前にいるのです。その度に退治して封印するのですが、また違う形で現れてきてしまいます。 何も私個人にと…
Ⅱ「村上一品洞」 村上一品洞は弊社の軍船で掻き集めた、古今東西の美術品を展示するギャラリーです。取り扱う商品 は骨董から玩具、現代美術まで様々ですが、それぞれの出自は明かせません。何はともあれ、店主は美術の力を 信じています。作品に魅力さえあ…
Ⅰ「PW〜日本人の肖像」 「俘虜も毎日を生きねばならぬ。しかしこういう状態で生きていることを、真に生きるといえるであろうか。(大岡昇平著『俘虜記』より 抜粋) 」 今年(2024年)の8月15日で、もう戦後79年が経つというのに、私たち日本人はまだ収容所に…
いよいよ本日、7月20日(土)から、川崎市岡本太郎美術館で「芸術は、自由の実験室−夏のアートキャンプ」展が始まります。図録のために書いた文が長大なので、以下 何度かに分けて紹介していきます。 ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ 今回、私の展示テーマは…
第27回岡本太郎現代芸術賞展が本日から始まりました。私の出品は21,23,25回展に続いて四度目になります。奇しくも奇数回ばかりですが、流石にこれだけ広い展示スペースを、毎年毎年納得する形で埋め尽くすのは不可能です。今回の私の作品アイデアは、25回展…
第27回TARO賞展の搬入・展示作業が始まりました。美術館に運び込んだ時はご覧の様なカオス状態です。ここから2日間、制限時間内で設営を全て終えなければなりません。 当たり前のことですが、作品というのは、ただつくるだけでなく、展示場所まで運んで組み…
正月早々めでたいなんて言っていられない災害・事故から始まった2024年ですが、いかがお過ごしでしょうか。私は冬休み中 遠出もせず、必要な買物以外は家で大人しく本を読んだり、作品のアイデアを捻り出そうとしていました。大した収穫もなく、気がつくと居…
受験(検)が始まり、3年生の生徒たちが一喜一憂する時期になりました。私自身も、恐らく人生最後の受験生の担任ということで、期待と不安がデッドヒートを繰り広げる毎日を過ごしています。試験が終わり、結果が出るまでの時間というのは何とも落ち着かない…
間もなく2022年が終わります。今年は前半TARO賞展、後半は笠間日動美術館の所蔵作品展示と、一年の約半分を大きな展覧会に参加して過ごせたので、個人的になかなか充実していました。特にTARO賞展はあれだけのスペースを3ヶ月間にわたって占有でき、しかも観…
ほぼ20年ぶりに笠間日動美術館を訪ねました。初めて作品が収蔵されたばかりの頃は、時折顔を出していましたが、だんだん展示される機会が減るに従って、私の足も遠のいていました。今回は作品のメインテナンスについて相談するため、しばらくぶりの訪館にな…
2022年 高・幅480cm、奥行150cm ミクストメディア 日曜日でTARO賞展が終わりました。全て搬出する前に、必ずや撮っておこうと思ったのがこの写真です。他の作品を片付けたブースに「ピカソ」だけを残して撮影しました。作者としては予想外でしたが、会期…
先日、東博で「空也上人と六波羅蜜寺」展を観てきました。ほとんどの像は以前にもどこかでお目にかかったものばかりでしたが、こうして一堂に会すると、それはそれで壮観でした。今回の目玉は運慶の四男 康勝の造った「空也上人像」です。久しぶりに対面して…
ロダン「接吻」2018年撮影 私はもちろんギリシャから始まった西洋彫刻史の重要性は認めていますし、何なら畏怖すら抱いています。ミケランジェロやロダンがやったことは誰にも真似できません。哲学と共に歩を進めてきた「彫刻」の歴史には論理的な説得力があ…
執念深い奴と思われると心外ですけど、また昔のエピソードについて書きます。別に愚痴ではありませんので悪しからず。 もう四半世紀以上前になりますが、銀座の大きな画廊のコンペで、私の立体作品が票を集めて、大賞候補になったそうです。ところが、審査員…
先週金曜日から第25回岡本太郎現代芸術賞展の搬入、展示作業が始まりました。ご覧の様な高さ5mを超える白い壁が三面に聳り立つブースを、各出品者は好きな様に使えます。破格の空間容積で、また会期も長いので、出品者の気合の入り方も尋常じゃありません。…
我が家は喪中なので、お祝いの言葉は控えますが、何はともあれ、新しい年になりました。今年もよろしくお願いします。さて、雪不足とコロナで3年連続して年末スキーには行けず、でも、教え子のコンサートに出掛けたり、展覧会準備をしたり、読書したりと、…
緊急事態宣言下ではありますが、中学校は予定通り始業し、あっと言う間に1月半ばです。しばらく週末の飲み会も自粛なので、暇を持て余すかと思いきや、案外呆気なく松の内を過ぎました。地域によって異なる様ですが、もう昨日は鏡開きでした。とは言え、我家…
あけましておめでとうございます。今年は私も5度目の年男ということで、牛の面を被ってみました。背景は2020年TARO賞展での私のブースです。ミノタウロスの様に迷路に入り込むことなく、歳はとっても新しい挑戦をし続ける2021年にしたいと思います…
三鷹の居酒屋「婆娑羅」のマスターから「ウチの店にも何か作品置いてよ。」と言われたので、これしかないだろうと、新薬師寺の伐折羅(伝迷企羅)大将の面をつくって届けました。週明けに店を覗いてみると、伐折羅は恭しく神棚に祀られていて、榊とお神酒ま…
会期が終わり、いよいよ撤収という時、私の展示に関する手紙をまとめて美術館から受け取りました。多くは知り合い、教え子、その保護者や家族からのメッセージでしたが、中には初めて私の作品を観た人からの感想もありました。それぞれのaddress欄にメールや…
新型コロナの影響で色々な施設が軒並み休業しています(甲子園も結局中止になってしまいました)が、TARO賞展は奇跡的に継続中です。これも生田緑地という広大な自然公園内にある立地の良さと、岡本太郎美術館の開放的な内部空間のお陰なのかもしれません。…
国技館や甲子園を無観客にし、東京ではほとんどの公共施設を閉鎖している現状ですが、岡本太郎美術館は今日も元気に(細心の注意を払いながら)開館しています。大勢が一ヶ所に集まる様な関連イベントは中止しているものの(3月20日に予定されていた私のギャ…
現在、第23回TARO賞展で「村上一品洞」が公開されています。本当は「村上」ではなく、丸の中に上の、村上の家紋(水軍の旗印)なのですが、活字では表記できません。「〜一品洞」は、言うまでもなく、このブログのタイトルであり、ネット上の私のギャラリー…
「ネズミ」麻布、樹脂、アクリル絵具 2020明けましておめでとうございます。年末は雪不足でスキーにも行けず、飽食、深酒、運動不足と三拍子揃った、正しい冬休みを過ごしています。そして、また今夜も宴会です。 さて、ディスプレイに使いたいからと頼…
初期の印象派展で「死斑のういた腐った肉の塊」と酷評された、ルノワールの絵があります。「陽光の中の裸婦」(1876)は、今でこそ世界各国の展覧会で引っ張りだこの作品ですが、まだ古典的なサロンが影響力を持っていた19世紀のパリでは、粗く雑な表現と看…
絵画の模写に比べると、立体の模刻はその何倍も手間がかかります。ピアノソナタと交響曲くらい違うと言ってもいいかもしれません。一つの方向から見て「できた!」と思っても、別の角度から見ると「全然ダメ」なんてことが当たり前に起こります。カバーであ…
「表現と再現」ということを、ポピュラーミュージックの世界で考えてみると、カバーはどうしてもオリジナルより一段低く見られる傾向があります。E.クラプトンの“I Shot the Sheriff”とかW.ヒューストンの“I Will Always Love You”の様に、成功した例もあり…