「村上一品洞」について①

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 現在、第23TARO賞展で「村上一品洞」が公開されています。本当は「村上」ではなく、丸の中に上の、村上の家紋(水軍の旗印)なのですが、活字では表記できません。「〜一品洞」は、言うまでもなく、このブログのタイトルであり、ネット上の私のギャラリーの名称です。今回、TARO賞展では一つのブース(5mx5mx5m)を丸々使って、仮想でなく、実在する画廊をつくってみました。展覧会のリーフレットには以下の紹介文を載せています。


『村上一品洞は弊社の軍船で掻き集めた、古今東西の美術品を展示するギャラリーです。取り扱う商品は骨董から現代美術まで様々ですが、それぞれの出自は明かせません。何はともあれ、店主は美術の力を 信じています。作品に魅力さえあれば、人の世界で美術が滅ぶことはないでしょう。

 個々の作品にキャプションはありません。主題とか様式とか、具象とか抽象とか、オリジナルとかコピ ーとか、そんな能書は忘れて、まずは一品洞のコレクションをお楽しみいただければ幸いです。   店主敬白』


 古の反社会的勢力ともいうべき水軍が営む、胡散臭い美術商という設定です。でも、博物館やギャラリーなんて、考えてみれば皆同じ様なものかもしれません。大英博物館やルーブル美術館に比べれば余程良心的な、架空の略奪品ギャラリーということにしておきましょう。そして今回は、せっかくの機会なので、ここ20年程の私の制作活動を振り返る、ちょっとした回顧展にしてやろうと考えました。

 内覧会では、記者の人からいくつか質問がありました。専門的に一つの分野を極めるのでなく、色々なカテゴリーを跨いで制作していることについては、「専門」という考え方が好きでないと答えました。何事においても、恐ろしく狭いテリトリーで、内輪にしか通じないネタをやり取りすることには意味を見出せません。美術の世界で「専門」なんて言葉を使うのは、バカな美術教員くらいだと思っていました。

 「お一人様回顧展は結構だが、それではあなたが今回、これぞTARO賞展のためにつくったと言える作品はどれなのか?」という質問には困りました。出展が決まってから描いた絵は何枚か飾ってありますが、TARO賞展のためだけにということになると、見渡したところ、この「〜一品洞  」の刻字看板しかありませんでした。