ゾンビ・ピカソ

 間もなく2022年が終わります。今年は前半TARO賞展、後半は笠間日動美術館の所蔵作品展示と、一年の約半分を大きな展覧会に参加して過ごせたので、個人的になかなか充実していました。特にTARO賞展はあれだけのスペースを3ヶ月間にわたって占有でき、しかも観客動員が見込まれる好条件の展覧会です。準備は大変でかなり消耗しますが、これが厄介なことに、終わってしばらくするとまた挑戦したくなる常習性があるのです。人間一度大きな作品の面白さを知ってしまうと、ちまちまと小さな作品ばかりに関わっていられなくなります。来年は無理ですが、また再来年以降、広い空間に展示してみたい気持ちがムラムラと湧いてきました。毎回「これで最後」と言いながら、舌の根の乾かない内にまた始める、これじゃ、まるで双六の「振り出し(に戻る)詐欺」ですね。

 さて、ピカソは私にとってリピート率No.1のモチーフです。つくるものに行き詰まると、無意識のひだの中から蘇ってくるゾンビの様に、眼前にいるのです。その度に退治して封印するのですが、また違う形で現れてきてしまいます。これは私個人にとってだけに留まらず、20世紀以降の美術界において、ピカソとはそういう存在なのかもしれません。ジャクソン・ポロックは自分の方法を模索していた若い頃、「畜生!これも奴がやってやがった!」とピカソの呪縛から逃れられなかった経験を後に語っています。ピカソ以後の美術家は多かれ少なかれ同じことを感じているに違いありません。最近、私も無理に抵抗することは諦め、何年かにいっぺん蘇ってくるゾンビを淡々と形にして、自ら墓に戻って行くのを待つ様な心境になりました。まあ、これだけデカいのをつくっておけば、しばらくは大人しく眠っていてくれるんじゃないでしょうか。