2011-01-01から1年間の記事一覧

胸像について②

私の彫刻作品の衣服は2通りあります。顔や手と同じように樹脂で固めたものと、麻袋を染めて服に仕立てたものです。文字通り「ハードウエア」と「ソフトウエア」とも言えますが、それぞれの味わいがあるので作品によって使い分けています。 普通、彫刻はどん…

木彫時計⑥風車Ⅱ

2009年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、漆 時計の針の動きを表すように、旋回する風車を彫ってみようと思いました。しかし出来上がってみると、丁度回り終わって止まったところにしか見えません。漆の色と相まって「諸行無常」の時計になってしまったようです…

ロダン

平櫛田中の背後に見えるのはロダン作『地獄の門』の実物です。富嶽ビエンナーレの審査を待つ間、室内彫刻作品は静岡県立美術館のロダン・ウィングに陳列されていました。たまたま私の作品が『地獄の門』の前だったので、記念撮影してみました。 ロダン壮年の…

前線にいること②

さて、どんな世界でも指導者は前線に身を置く「現役」でなくては困ります。だから評価はどうあれ、美術家として(制作でも、研究でも)自身の活動を世に問うことは無駄じゃありません。目の前の人間が学び続けている姿は、生徒達にとって何よりの刺激だと思…

前線にいること①

どうも私は「美術教育研究会」みたいな集まりが苦手です。学校の研修などで、やむなく出席しなければならない時は、なるべく出口に近い席で大人しくしています。美術は、私にとって勿論何より大切ですし、教育がなければ、今いる国や世界を存続させることは…

台について ⑤

半円柱同士を直角に捻って接合してみました。上物の形に合わせて台の下半分を大きくしましたが、彫刻との境目が気になったので、薄い板を挟んであります。本当は丸い金属板が良かったのですが、手に入らなかったので、使い古しの画板を金色に塗ってみました。

木彫時計⑤風車

2008年 直径24cmx厚さ1,4cm 桂板、漆 全体に拭き漆を施した後、風車と数字はそれぞれ弁柄を混ぜた赤漆と砂鉄を混ぜた黒漆で仕上げました。慌てて作業をしたので、羽根に少し縮れが出ていますが、気にしません。本職では決して許されないところです。

渓谷

2007年 117cmx117cm 麻布、胡粉、墨、柿渋、岩絵具 夏の朝、奥多摩で水と岩を描きました。今は山奥の穏やかな風景に見えますが、遙か昔は水と樹と岩が壮絶な争いを繰り広げていたかもしれません。河は森を削り、樹が岩を投げ捨て、岩は水の流れを曲げる…

木彫時計④能面

2007年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、着彩、ワックス 『孫次郎』という、室町時代の能面です。年代物の感じを出すのに、胡粉を塗って、少し削り落としてから磨きました。面の背景は柿渋です。明るい壁やガラス面に掛けると光るように、数字は糸ノコで透かし…

専門バカと器用貧乏

私が「中学校で美術を教えている。」と言うと、十中八九「専門は?」と訊かれます。美術の教員同士だと尚更、嘗ての専攻は気になるようです。学生時代から同じように作品をつくり続けている人なんて実際は殆どいないのに、『専門』は相手を値踏みする血液型…

信楽焼締ジョッキ

2010年 高14cmx16cm(口径10cm) 信楽の土をカンカンに焼締めてみました。強い還元がかかって、まるで備前のような色艶が出ました。こういう無釉の碑器は、細かい泡が立って、ビールが美味しくなるようです。

臨月

2001年 162cmx60cmx45cm(台座含む 像高102cm) 麻布、樹脂、油彩、柿渋、画板 読んで字の如くです。切迫早産の危機を乗り越え、20世紀の最後に生まれた娘も、もうすぐ11歳になります。

木彫時計③樹

2006年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、着彩、ワックス 子供部屋に丁度いい時計を作ろうと思いました。大きな樹を見上げると、あちこちの隙間から、小さな空が覗いています。たくさんの光の斑点と葉っぱの重なりを、透かし彫りと彩色で表してみました。

胸像について①

広いスペースに自分の作品を並べてみて、まず思ったことは、やはり胸像より全身像の方が印象が強いということです。像を自立させるのはなかなか大変で、胸像に脚を付ければ良いというものではありません。最初から全身の構造を考えて、地面に近い部分から始…

木彫時計②蜘蛛の巣と蝶

2005年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、着彩、ワックス デザインを考えながら文字盤を12等分したところで、そのまま螺旋を加えて蜘蛛の巣にしました。それだけでは絵にならないので、4(死)に蝶をかけてみました。

地水

2010年 140cmx140cm 麻布、樹脂、胡粉、墨、柿渋、竹、麻紐 前にアップした絵画作品「地空」と同シリーズのひとつです。4点合わせるときは、これが左下になります。 宮本武蔵は『五輪書』水の巻で「観」と「見」、二つの目のことを語っています。(『兵…

紅志野ジョッキ

2010年 高14cmx16cm(口径10cm) 去年の夏休みに中学校の美術部で陶芸教室をやりました。先生と生徒二十数名が手捻りで器作りに挑戦しました。私は暑いと、ついビアジョッキばかり作ってしまいます。これはその時のひとつですが、焼いてみたら思いがけず…

木彫時計①斑猫

1998年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、着彩、ワックス 言わずとしれた竹内栖鳳の名画『斑猫(はんびょう)』を浮彫で模写してみました。栖鳳は旅先で会ったこの猫を自分の絵と交換して持ち帰り、写生を繰り返して描き上げたそうです。道理で生き生きしていま…

不動明王

2011年 14cmx18cm 紙、ペン、水彩 京都で少し時間があったので、スケッチでもしてみるか、と東寺を訪ねました。東寺と言えば五重塔ですが、あれはやはり遠くから見るものです。今回は法隆寺や薬師寺で極上の塔を見たばかりだったので、なおさら描く気に…

ジャコメッティと矢内原

1999年 63cmx140cmx57cm 麻布、樹脂、油彩、木、他 パリのカフェでテーブルについたジャコメッティと矢内原伊作を向かいの宇佐見英治が撮った写真があります。対称的な風貌の二人がこちらを向いて並んだ場面をそのまま彫刻にしてみようと思いました。台…

五輪

2008年 140cmx140cm 麻布、樹脂、胡粉、墨、柿渋、弁柄、竹、麻紐 丸や三角を描いて楽しいの?と訊かれることがありますが、まあね、と答えます。正確に言うと、作業そのものが楽しいわけではなく、つくったものの中に面白味を見つけることが楽しいので…

台について ④

台としては重量に耐えて、作品を引き立てることが肝腎ですが、さらに運搬や保管まで考えると、軽く、分解できるといったことも大事になってきます。この台の枕木と欅板に挟まれた部分は、彫刻と同じ麻布の立方体ですが、骨格もないのに非常に軽く丈夫にでき…

フィクションとノンフィクション

学生の頃は本と言えば小説でした。社会人になってからも色々と読みましたが、気がついてみると物語には興味を無くしていました。高校の教科書で読んだとき、全く面白いと思わなかった小林秀雄が、その語り口や物事の端折り方まで、肌に合うと感じるようにな…

地空

2010年 140cmx140cm 麻布、樹脂、胡粉、墨、柿渋、竹、麻紐 70cmx70cmの麻のボードを4枚繋ぎ、暖簾のように竹棒で吊っています。この大きさの4枚を更に合わせると、280cmx280cmの巨大な画面になります。裏にも色違いの図柄が描いてあるので、天井から…

志野ジョッキ

2010年 高14cmx幅17cm(口径10cm) 表はススキ、裏は檜垣文です。鮮やかな緋色が出ました。当然、左利きです。

地〜chi、水〜sui、火〜ka、風〜fu、空〜ku

上から「空〜ku」「風〜fu」「火〜ka」「水〜sui」「地〜chi」 2010年 各100cmx100cm 麻布、木、樹脂、胡粉、墨、弁柄、柿渋、岩絵具 今回の個展の壁面を飾るために描いたものを、五輪塔と同じ順番で重ねてみました。ちょっとピンぼけしています。すみま…

五輪塔

小林秀雄が生前、その形をとても気に入って買った、鎌倉時代の五輪塔が小林家の墓石になっていることは知っていましたが、ちゃんと墓参したのは初めてです。今日は天気も良かったので、スケッチブックを広げて描いてみました。写真ではわかりませんでしたが…

立体と平面、具象と抽象について ④

抽象作品が並んだ美術館で、具象彫刻に出会ってほっとしている人がいますが、考えてみるとおかしな話です。今でこそ世間は着ぐるみやフィギュアみたいな人形だらけですが、一昔前は意図的に人の姿を再現したものと言えば、仏像ぐらいでした。 逆に、抽象的な…

台について ③

像と台座のバランスは誠に微妙です。台が小さいと不安定ですし、逆に立派すぎると彫刻が鏡餅の上のミカンみたいになってしまいます。等身より大きな彫刻の場合、重量の問題もあります。 この作品では大きな菱形の彫刻を支えるため、枕木を重ねて台にしました…

立体と平面、具象と抽象について ③

昔から日本人のものの見方や器用さは、案外、彫刻向きだったかも知れません。仏像伝来から200年足らず、天平時代には既に日本の造仏技術は完成の域に達しています。その後、様式が画一化した時期もあったものの、平安時代晩期には慶派が現れ、活況を取り…