フィクションとノンフィクション

 学生の頃は本と言えば小説でした。社会人になってからも色々と読みましたが、気がついてみると物語には興味を無くしていました。高校の教科書で読んだとき、全く面白いと思わなかった小林秀雄が、その語り口や物事の端折り方まで、肌に合うと感じるようになったのは40歳を過ぎてからです。

 昔は想像力というものは物語(フィクション)にしかないと思っていました。が、それはファンタジーのことで、イマジネーションとは別物です。私にとって、本当の想像力は「時代や場所を超えて他人の人生を生きる」批評精神の中にありました。小説にそれがないとは言いませんが、ノンフィクションの方が単刀直入で、私のような性急な人間には向いています。考えてみれば肖像彫刻もそうです。大切なことは自分にとって“リアル”であるかどうかだと思います。