五輪塔

 小林秀雄が生前、その形をとても気に入って買った、鎌倉時代五輪塔が小林家の墓石になっていることは知っていましたが、ちゃんと墓参したのは初めてです。今日は天気も良かったので、スケッチブックを広げて描いてみました。写真ではわかりませんでしたが、水輪には座仏の浮彫がありました。地輪は苔むして、完全に周囲と同化しています。火輪と風輪の継ぎ目が少し傷んでいますが、確かに穏やかで素朴な、いい形の五輪塔だと思いました。

2011年 24cmx33cm 水彩
 大著『本居宣長』は伊勢松阪にある宣長の奥墓へ参った話から始まります。3年前に私も山室山に登って山桜を訪ねてから、何となく小林秀雄の墓に参ったような気になっていました。今日、改めて五輪塔を訪ねて、小林秀雄本居宣長その人だったという思いを強くしました。霊媒のように、時代や場所を超えて誰かになりきることができる、こんな作家を私は他に知りません。