前線にいること②

 さて、どんな世界でも指導者は前線に身を置く「現役」でなくては困ります。だから評価はどうあれ、美術家として(制作でも、研究でも)自身の活動を世に問うことは無駄じゃありません。目の前の人間が学び続けている姿は、生徒達にとって何よりの刺激だと思います。ただ、当たり前のことですが、教員がアーティストとして「現役」である必要はないのです。中途半端な作家活動を、学校で一人前に働かないことのいい訳にするぐらいなら、何もしない方がマシです。

 教員はまず、教室や職員室で生徒や同僚としっかり向き合うことが「前線に身を置く」ということでしょう。もちろん専任であれば、さらに校務分掌や保護者対応といった仕事もあります。現場でやることをやらず、後ろ指を指されながら「研究会」で得意満面に「美術教育」を語ったところで、所詮は負け犬の遠吠えです。
 作品なんか一切つくらなくても、周りから慕われる、素晴らしい美術教師を私は何人も知っています。学校で、他の先生がやりたがらないような重たい仕事を淡々とこなしながら、放課後みんなと楽しく一杯やれるような大人は、アーティストでなくても格好良く見えます。そういう人は勿論「美術教育研究会」で偉そうに演説したりはしません。人が「前線にいること」は結局、その人と「友達でいられること」と同じ意味なのだと思います。