胸像について②

 私の彫刻作品の衣服は2通りあります。顔や手と同じように樹脂で固めたものと、麻袋を染めて服に仕立てたものです。文字通り「ハードウエア」と「ソフトウエア」とも言えますが、それぞれの味わいがあるので作品によって使い分けています。

 普通、彫刻はどんなにリアルであっても、布を着せると違和感が生まれます。衣類の断片が残ったミイラを見るような、ギョッとする感じと言えばいいでしょうか。ドガはブロンズにチュチュを着せた踊り子の彫刻をつくっていますが、実物を前にするとかなり異様です。作者の意図はわかりません。或いは鑑賞者の期待を逆手に取った表現だとすれば、試みは成功かもしれません。そこにはまるで、辛い現実を受け入れられない親が子供の死体を飾り付けてしまったような気味悪さがあります。衣を着せた仏像なども、それによって実在感が増すより、寧ろ本当は生きていないことが強調されて見えます。
 でも、どうでしょう。作者の欲目かもしれませんが、自分の作品にはあまり布との相性の悪さを感じないのです。同じ素材を使っていることもあるでしょうが、少なくともとってつけたようなわざとらしさはないと思います。大したことじゃないと言われればそれまでですが、「ソフトウエア」を着こなした彫刻というのを私は他に知りません。