ムンク

2022年 高185cm 麻布、樹脂、漆、木、他

 今年のTARO賞展に出品したまま、まだ紹介していなかった立像が一つありました。言わずと知れたムンクの肖像です。でも「叫び」は知っていてもムンク本人のことは知らない人がほとんどだった様で、「へーっ。ムンクってこんな顔してたんだ。」という反応が多くありました。私も本人に会った訳ではないので、実際のところは分かりませんが、残された写真や自画像を想像で繋いでつくりました。ノルウェー人で長身、痩せ型の胴体に歳と共に肉が付いた、ちょっとマーロン・ブランド似の渋いおじさんというところでしょうか。左手の中指の先が欠けているのは色男ならでは、女性絡みの拳銃暴発事故のためだそうです。

 実はこの像、初めムンクにするつもりはなく、日本人をモデルにした鋳造彫刻の原型としてつくり始めました。ところが、途中でその話が立ち消えになってしまったので、もう少し思い入れのある人物にしようと考え、結局、壮年のムンクにした訳です。西洋人と東洋人では、体格が別種の生き物ぐらい違うということを再認識した造像となりました。足の下に台があるので、ちょっと嵩張りますが、安定して立ち続けています。