三階のブルータス

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2020年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 ある日、知り合いが学校に突然やって来て、ブルータスの石膏像を置いて帰りました。私は授業中だったので、本人には会えず仕舞いでした。美術関係の仕事でもない人(バーのマスター)が、なぜこんなに嵩張るモノを持っていたのかも謎ですが、サンタクロースの様に姿を見せずに去っていくのが何とも渋いところです。

 美術室には元々ブルータス像があったので、正直もうひとつは必要なかったのですが、改めて二つ並べてみると、えらく形が違っていることに驚きました。今回のプレゼントの方が、表面は少し汚れているものの、形としては顔の線などもしっかりしていて、恐らく実物の大理石像に近いのではないかという気がします。

 オリジナルの像はもちろん、シーザーを裏切り、「ブルータス、お前もか。」と言わせた、あのブルータスがモデルです。但し本人を前にした肖像ではなく、1500年後にミケランジェロが想像でつくり上げた大理石彫刻です。

 それを写した石膏像は比較的形が取り易いので、初心者のデッサン練習にも向きます。しかし、コピーなんて皆同じと思っていたのは大きな間違いでした。形はもちろん、今度のブルータスは、元々美術室にあった(恐らく安物の)ものよりずっしり重く、棚の上に仕舞うのも骨でした。


 急に雲が湧き上がって来た夕方、この像を窓の外の景色と一緒に描いたら面白いかなと思いつきました。できた絵は額装してバーの店先に置いて来るつもりでしたが、中々そうもいかず、カウンター席でマスターに渡してから、ビールを2杯飲んで帰りました。