PW〜生きている俘虜 ②


2018年 175cmx400cmx400cm 麻布、樹脂、漆、木、鉄、その他
TARO賞展の規約では過去に発表した作品でも、賞さえ取っていなければ、出せることになっています。そこで昨年 京都に出品した同タイトルの作品を膨らませてみることにしました。元々、この作品のアイデアとしては、蔡國強の狼のような、群像にしたかったのですが、通常の公募展でそこまでの占有面積は与えられません。でも京都市立美術館のレトロな雰囲気も捨て難かったので、京展には前列の二像だけを小さな柵と共に出展しました。
http://d.hatena.ne.jp/murakami_tsutomu/20170311 http://d.hatena.ne.jp/murakami_tsutomu/20170318
展示スペースに恵まれたTARO賞展に出すにあたり、最初は7像+柵にするつもりでした。10年程前につくった三人の友人たちの像も、例によって油彩仕上げだったため、表面を削り、漆で塗り直して加えました。でも並べてみるとまだ空間がスカスカだったので、急遽2像増やすことにしました。せっかくのTARO賞展だからということで、年末から岡本太郎像までつくり、漆を塗リ終えたのは1月末、作品搬入の4日前でした。
ゼロからつくった像は4つだけとは言え、作品を削り直したり、それぞれの台座を誂える作業は、かなり骨が折れました。美術作品制作を知的活動と勘違いしている人がいるかもしれませんが、とんでもない話です。頑丈な台づくりは結構な肉体労働でした。手持ちの電動工具では歯が立たない100mm厚の木材を手引き鋸で切り分けたり、像高に合わせて鉄アングルをカットする作業が続くと、さすがに嫌になってきます。安全のため、有刺鉄線の棘を切る作業も思いの外 大変でした。すぐ終わるだろうと始めたのですが、一箇所に4本ずつある棘は意外に硬く、ペンチで350本以上切り落とした後は右手の握力が無くなっていました。

元々私の作品は、何となく取っておいた廃材や道具を転用することで成り立っているとも言えますが、鉄の心棒と有刺鉄線の柵に錆をつけるため霧吹で塩水をかけたり、台の木の色を暗くするためにバーナーで焼いたり、そこら辺のものを総動員してやっと期限に間に合わせました。美術作品の制作はほとんど汗をかくことばかりですが、重労働と言いつつ飽きないのは、こうして周りのあらゆるものを生かしながら何とかする、ブリコラージュの楽しみが癖になるからなのかもしれません。