志野茶碗


2014年 高9.5cmx口径12.3cm
 大雑把な筒型に轆轤引きしたものを箆で削り、少し歪ませて成形しました。去年、今年と何度か国宝の「卯花墻(うのはながき)」を観る機会がありましたが、その作為は徹底していました。上から見るとほとんど三角に近い楕円形に歪められ、これでもか!と箆を入れられているのに、まるでいやらしくなく、清々しささえ感じました。あそこまで大胆な造形ができる陶工は只者じゃありません。

 この茶碗、鉄絵だけは何となく「卯花墻」を真似てみましたが、全体の姿は全く別物です。ただ、ここにきてようやく火色の出し方に気付いたので、桃山志野らしい器肌を再現できるようにはなってきました。自分の手を使ってやってみると、つくづく志野という焼き物は作為に満ちていることが分かります。あの野趣溢れる焦げや赤味、更には月面クレーターのような柚子肌は決して偶然やアクシデントの結果などではなく、事故を装って綿密に計画された完全犯罪でした。やはり桃山の陶工は只の職人を超えた、恐るべき芸術家だったようです。