井戸茶碗


2014年 高9.3cmx口径15.4cm
 性懲りもなく、大井戸茶碗に挑戦してみました。国宝の喜左衛門井戸とほぼ同サイズです。もうちょっと胴に膨らみを持たせた形の方が一般的かもしれませんが、やり過ぎると丼ぶりみたいで品がなくなってしまいます。小林秀雄が喜左衛門をジョボタレ井戸と称しながらも「ただその比類のない彫刻美が曲者」と書いていますが、確かに口縁から腰にかけての微妙なカーブと因縁話こそがこの茶碗の国宝たる所以かもしれません。自分でやってみてつくづく思いますが、まさに陶芸は「造形力と科学」のゲームです。
 大井戸型の碗は単純そうに見えてなかなか手強く、轆轤びきにもかなり神経を使います。少し鉄分を含んだ土は滑らかですが割れが入りやすく、一息に引き上げていくのは大変です。乾燥して焼くと大分縮むので、このサイズにするためには、口径18cm、高さ11cmくらいで作っておく必要があります。高台もちょっと油断すると削り過ぎてしまうので見極めが大切です。

 まだ今は焼き上がったばかりなので目立ちませんが、全体に細かい貫入(ヒビ)がびっしり入っています。使い込んで古色がつけば、ちょっと期待できます。高台周りも少しはカイラギらしくなってくれたらいいのですが。

2014年 高9.5cmx口径15.8cm
 こちらは大きさこそ大井戸ですが、色や轆轤目の強さからして青井戸とも見える茶碗です。釉掛けまでは割に上手くいったのですが、本焼きに落とし穴がありました。もうちょっと枇杷色に焼き上がる予定だったのに、還元が強くかかり、おまけに温度も高すぎたようで、焦げのある灰色になってしまいました。もしかすると本物の井戸茶碗も、窯の中で酸素がたっぷりある場所に大井戸、還元しやすい場所には格の下がるものという具合に、焼き分けられていたのかもしれません。