フェティシズム


2016年 176cmx110cmx110cm 麻布、樹脂、漆、木、椅子 他
 初めは別個に作り始めた友人達の等身像を、こうした方が面白いかなと思い、組み合わせてみました。一見 男女の微妙な関係を匂わせていますが、実はこの二人、互いに殆ど面識もありません。知り合いの中から、モデルとして絵になりそうな人を揃えたらこうなりました。それぞれ、とても教員とは思えない、見事な俳優と女優でした。「男と女」という題を考えていたのですが、言うまでも無いと思い直して、「フェティシズム」にしました。

 彫刻を造る時、全体の構造からスタートするのが普通ですが、私の場合、部分から始めて拡大していくこともあります。自分にとって、リアリティは全体の動勢よりディテールへのこだわりに宿るものなのかもしれません。さて、フェティシズムとは本来、身体の部分へではなく、物へ向かう偏愛のことだそうです。とすると、靴フェチ、スーツフェチはよいとしても、脚フェチとか鎖骨フェチは間違った用法ということになります。但し、今回のタイトルはそんな厳密な意味ではなく、部分へのこだわりが連続して、より生々しい現実を形づくっているという程の軽い乗りでつけました。

 あさご芸術の森美術館の二階はゆったりした展示スペースになっていますが、中に一本天窓を支える円柱が立っています。今回はこれを展示に利用してみようと思いました。壁面に立て掛けるより、作品を観る角度は拡大しますし、もたれて立つ男のリアリティも増すと考えました。
 男女像はそれぞれ腰のところで分割できるようになっています。どうも運搬のことばかり考えて造る癖がついたかもしれません。とは言え、アートコンペティションの最終日、搬出のために車で行ったのですが、美術館の元館長さんが預かってもいいと言ってくださったのに甘えて、結局そのまま作品は置いてきてしまいました。