彫刻について ②

 このブログをスタートし美術館で個展をするまで、私にとって彫刻とはあくまでも造るものでした。自分の作品を見せることにはあまり関心が持てず、兎に角それを設置する場所まで輸送すれば終わりと思っていました。対象の形を追いかけ捉えることだけが面白く、一旦出来上がってしまうと作品への熱は急速に冷めていきます。これは原始の男(オス)の名残なのでしょうか。彫刻の方でも漆が乾いた途端、殻を被ったように私に対して他人行儀になってしまうのです。

小林秀雄」(「昭和」2011-11-06 - 村上力(むらかみ つとむ)ブログ美術館より)
 去年、個展会場のレイアウトや展示作業を行ってみて、それまでと作品に対する考えがかなり変わりました。特に改めざるを得なかったのは照明効果への認識です。同じ空間に置かれた彫刻がライティングによって全く違って見えることに驚きました。そして「作品を見せる」ということに少し興味が湧いてきました。自分が時間をかけて造ったものをせっかく展示するのであれば、じっくり見て貰えるようにした方がいいに決まっています。人が周囲を廻って様々な角度から視線をぶつけることも彫刻成立の大切なプロセスだと思うようになりました。
 さて彫刻は実物を見てもらうに越したことはありません。が、常に作品がどこかに展示されているとは限らず、こうして(いつか本編を見てもらうための)予告編のようにブログで紹介しています。改めてファインダーを通して自分の作品と向き合ってみると、見ること、伝えることの難しさと同時に面白さを感じます。こんなはずじゃなかったという写真もあれば、自分の知らない表情が写っていることもあります。カメラという固定された一眼で切り取った作品は断片であり、彫刻という分厚い本の1ページにすぎません。ちょっとしつこいかもしれませんが、一つずつの作品をできるだけ多くのアングル、距離から繰り返し紹介していこうと思います。