彫刻について ①


「ピカソ」2011-04-01
 私にとって彫刻を造るという行為はモデルその人に肉薄することに違いありません。だからいくら有名でも近づきたくない人物の肖像は造れません。思い入れや関心を含んだその人のイメージを視覚的に、できる限り様々な角度から、重ねていくのが彫刻することなのだと思います。そうしてみると…個々のイメージをフッサールに倣ってノエシス-ノエマと言い換えれば、彫刻は現象学そのものです。言葉の代わりに素材を用いて目の前の不確かな形をしっかり掴まえる試みとも言えます。
 彫刻でこの世界全てを表現することはできないように、それを造ることにも自分の能力全てが動員されている訳じゃありません。思想や生き様を残らず作品に注ぎ込んだと胸を張る人も中にはいますが、どう頑張っても私には自分の言語能力を生かす美術作品など考えつきません。機能的な彫刻や具象的な器なんてものに意味があるとも思えません。初めから言葉で伝えやすいことは話したり書いたりすればいいし、器は使い勝手を考えてシンプルに作ればいいでしょう。彫刻には彫刻の間口があります。何から何までそこにぶち込もうなんてバカげています。