鞄と帽子

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2020年 23cmx31cm 紙、鉛筆、水彩

 作業机にドサっと置いた鞄と帽子が作る構図が絶妙だったので、スケッチしておきました。絵にする程のこともない、ありふれたバッグとキャップですが、どちらも気に入って、ずっと使い続けています。黒いポリエステル製の鞄は、もらってからもう10年くらいになるでしょうか。メーカーのタグなどは擦り切れてしまいましたが、自粛期間中オーバーホールに出して、金具やジッパーを替えてもらったので、まだ当分保ちそうです。表皮は黒一色ではなく、微妙に迷彩柄になっているのがポイントです。

 帽子は同じ様なキャップばかり沢山ある中で、この2〜3年は何となくこればかり被っています。使い込み、洗う内に、濃いカーキ色がいい色になってきました。素材が何であれ、身に付けるものは、まず機能的なこと、そして馴染む内に味わいが増すものが好きです。もしかするとこの基準は、自分の周り全てに拡大できるかもしれません。

 風景でも、人物でも、静物でも、まず思い入れがないものは作品にできないし、私にとって絵や作品にならないものはただの外部環境に過ぎません。この認識論の網の目を抜けてくるものだけが、私の内世界を構成している訳で、誤解を恐れずに言えば、自分に関わりのない人より、使い古した鞄や帽子の方が、私への影響力が強いということです。別に、それは当たり前のことで、無論 人それぞれの存在価値云々とは何の関係もありませんが。