阿修羅②


 明治時代半ばには欠損していた腕を想像で復元してみると、こんな形になります。阿修羅が胸の前に捧げ持っているのは黄金の宝珠です。折れていた腕から先は、こうして着脱できる様にしました。

 造像当時の姿を再現するのなら、色まで元に戻すのも一つの選択肢ではありました。恐らく全身真っ赤だった阿修羅は、金の縁取りがある鮮やかな緑色の布を纏っていた筈です。でも、古色のついた像に馴染んだ目には、どぎつ過ぎるので、やはり見慣れた今の色にしました。とは言え、同じ材料にはこだわりたかったので、実物の表面が剥落して地が見えている部分は色漆で表現し、純金を使って漆箔もしてみました。