異形の森

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2022年 5m×5m×5m 麻布、樹脂、漆、木、他

 今回のTARO賞展パンフ用に書いたコメントです。

ジャコメッティの彫刻に「森」という作品があります。逆光に浮かぶ影法師にも見える、大小様々な人物と、ひとつの大きな頭部が、歪な盤の上に並んでいます。人の姿をつくり続けていると、だんだんその形がまともな存在とは思えなくなってくることがあります。リアルになればなる程、大きさや形が奇妙に見えてくる。恐らく制作中の彫刻家もそういう状態だったのではないでしょうか。対象が歪む程見つめたジャコメッティに倣い、私なりに存在に迫ってみたのが、今回の「異形の森」です。還暦で迎えたこの春のTARO賞展、美術教員としても定年、一区切りです。


 展示空間が展示空間なので、(ちょっと抵抗ありますけど)作品はインスタレーションと言わざるを得ません。紹介文の通り、今回の展示は、ジャコメッティの「森」という作品を下敷きにして、等身人物像7点と大きな頭部で構成しました。タイトルに含まれる「異形」は、制作中にリアリティを求めるほど、逆に異様に感じられてくる自身の経験を表すと同時に、ジャコメッティの「森」を異なる形で表現したという説明でもあります。大きなピカソの顔には両手とボーダー(シャツ)を付け加え、周囲の壁も彫刻や自画像で埋めました。左壁面に飾った小さなジャコメッティ像だけが向こうを向いているのは、オリジナルの「森」の作者へのオマージュと言ったところです。

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 先週、紹介した「天燈鬼・龍燈鬼像」をブース入口両側に狛犬のように配置して、結界を張ったのは良かったのですが、その効き目がありすぎるのか、ブース内に入ってはいけないと勘違いする人もいる様です。ここは是非、中に入って一つ一つの作品をじっくりご覧いただきたいと思います。