浄土寺浄土堂

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2019年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 6月初め、日本芸術会館に行ったついでに、神戸観光をして来ました。今回は珍しく新幹線往復だったので、駅でレンタカーを借りて、小野市の浄土寺まで足を延ばしました。浄土寺には前も何度か立ち寄りましたが、ゆっくり絵を描いたのは初めてです。

 鎌倉時代に重源上人がつくった、所謂 天竺様の建造物として、遺っているのは東大寺南大門とこの浄土寺浄土堂の二つだけです。同じ週初めには、修学旅行で南大門にも行っていますし、「重源上人坐像」を模刻したタイミングで、いっぺんに両方観ておくのも悪くないと思いました。

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 絵の通り、とてもシンプルな寄棟造の浄土堂ですが、中に入ってみると、イメージがガラッと変わります。天井板はなく、屋根裏のてっぺんまで大空間が広がっています。そして、普通の寺では正面にあるべき三尊像が、建物の中央に聳える様に立っているのです。建築の構造を担う柱や梁、貫や組物は全て朱色に塗られ、堂内は、高さ5mを超える黄金の阿弥陀仏を中心にした、極楽浄土が表されています。夕日が西側の蔀戸を通して入ってくる時季には、途轍もなく幻想的な光景になることが想像できます

 堂内には巨大な三尊像の他、特に装飾もなく、参拝者は快慶作の阿弥陀仏の周りをぐるっと回ることができます。もしかすると鎌倉時代以降、檀信徒はこの堂を集会所として寄り合い、本尊を取り巻く様に、飲めや踊れやの大宴会を催していたのかもしれません。正面から圧してくる聖堂的な建物とは違い、何とも民衆目線の、まるで盆踊り会場の様な浄土堂なのでした。

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 追記 「重源上人坐像模刻」を出展していた あさご芸術の森美術館開館20周年記念企画「人とアートの無限の繋がり1+1+1…展」は7月7日(日)で会期終了しました。