表現と再現①

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  昨年の11月に、ふと思い立って「重源上人坐像」を模刻してみることにしました。元の像は、東大寺の俊乗堂で年に数日だけ御開帳される、鎌倉時代の仏像です。南都焼討で灰燼に帰した東大寺を再建した老僧の姿を、恐ろしくリアルに木彫で表しています。

 造り方は違いますが、原寸大(つまり等身)でこの像を再現してみて、とにかく仏師の腕がハンパないということだけは良く分かりました。恐らく運慶、もしくは快慶かもしれない、と言われていますが、その刃は冴え渡っていて、しかも凄まじい手のスピードが感じられます。一見すると、80才代の俊乗房重源は年老いて萎んでいる様ですが、実はかなり量感があります。当時としては、並外れて長寿であるばかりか、かなりの大男だったはずです。そんな怪僧の相貌は克明に、袈裟を纏った身体はざっくりと、全体を見通した鑿捌きは只者じゃありません。

 制作途上で、まだ完成までにはしばらくかかりますが、今回の、言ってみればオリジナルでない、カバー制作を通して考えたことや思うことを、いくつか雑感として残しておこうと思います。