北野異人館街

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2019年 27cmx33cm 紙。鉛筆、水彩

 神戸をしっかり観光するのは初めてだったので、新神戸から三ノ宮にかけて、有名どころは取り敢えず歩いて回ってみました。

 新神戸駅を出て、まず驚いたのは、駅裏がいきなり切り立った崖状の山になっていることです。布引の滝という表示に惹かれて行ったのですが、途中で道を間違えて、とんでもない山の中に踏み込んでしまいました。ロープウェイの駅辺りで気づき、汗だくで戻って、何とか雄滝まで辿り着きました。新幹線のすぐ脇とは思えない、本物の渓谷でした。正に、子供の頃しばらく神戸にいた父から「あそこは山と海の間が狭いから、大雨が降ると鉄砲水の被害が出ることが多かったんだ。」と聞いていた通りの地形でした。

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 北野異人館街は、新神戸駅から三ノ宮に向かって右側、山の手沿いに入っていった辺りにありました。ほとんどアミューズメントパークと言ってよく、長崎にしろ、横浜にしろ、港町はどこも観光商売がうまいなあと、そこだけは感心しました。張りぼての様な建物には大して興味が持てませんでしたが、「北野」という町名に少しだけアンテナが反応しました。福原遷都の折に、平清盛が京都からこの地に勧請した北野天神が、その名の由来なのだそうです。

 この絵のレンガ色の建物は風見鶏の館(トンガリ屋根の上の風見鶏は構図上邪魔だったので、カットしました。)ですが、そこから右の木立の中に目を移したところに見えるのが、北野天神の屋根です。

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 長い石段を登ってみると、京都の北野天満宮とは似ても似つかぬ佇まいの、ずっと庶民的な神社が丘の上にありました。その境内からは、海までの狭い範囲にひしめく、父が懐かしく語っていた神戸の街が見渡せました。