テーマ『風貌』について ③

 さて、自分を無にして造る人物像は、本当は「人仏像」なのかもしれません。仏教、特に禅宗で高僧の肖像は頂相(ちんぞう)と呼ばれ、唐招提寺の鑑真和尚像や東大寺の重源上人像など多くの名作が造られてきました。徳の高い人物の風貌をリアルな仏像に表すことは、実は日本では聖徳太子の時代から行われていました。私は世界の彫刻史に連なる、この頂相の伝統をこれから先に繋げていきたいと思っています。

 もし、「今の自分」なんてものがあるとすれば、私が彫刻で造った人と造りたい人たちが、そのほとんどの部分を占めていると思います。