ストーブのある片隅

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 2019年 25cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 ウチの北東隅(鬼門ですが)、ペレットストーブのある一画が私の読書スペースです。エアコン、まして石油やガスヒーターの前でくつろぐ気にはなりませんが、木が燃える焚火のそばでは何時間でも過ごせるのが不思議です。薪こそ使いませんが、間伐材のペレットを燃料にするこのストーブは、住宅地でも設置可能な、お手軽暖炉です。シーズン後の掃除など、メインテナンスは面倒ですが、それでもやはり火の前の贅沢読書には代え難く、15年間不便に耐えながら使い続けています。ラウンジピットに設えた、自作の木製リクライニングチェアが私の定位置です。

 最近、ここで読んだ本で面白かったのは精神医学者中井久夫さんの数冊と山口周さんという人が書いた「劣化するオッサン社会の処方箋」(光文社新書)です。

 中井先生の「いじめの政治学」とそれを子ども向けにした「いじめのある世界に生きる君たちへ」は教育関係者必読だと思います。他にも、神戸で自ら震災に遭いながら被災者のケアに当たった体験記や、少年時代の思い出のエッセイ、翻訳者として描くギリシャ詩人の肖像など、どれも読み応えがあり、じっくり味わえます。

 山口さんは私より少し下の世代の人です。前著「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか」(光文社新書)が面白かったので、新刊も買ってみましたが、これまた成る程という内容でした。私の好きな加藤典洋、内田樹という系譜に連なる論客になるのではないかという予感がします。ただ内田樹さんから山口さんまで20才の年齢差があり、このことがまさにこの本のテーマになっています。もちろん私がその間の残念な世代に属していることは、言うまでもありません。詳しい中身については触れませんが、ひとつひとつの論考に、真摯に根拠が示されていて、とても読み易いと思います。しかしまあ 、私が何を言っても、結局 本なんてものは、自分で手に取って読んでみなきゃわかりませんからね。

 さて、ストーブの上に飾ってあるのは、友人の彫刻家新井さんからいただいた、ブロンズの少女像です。今やすっかり鋳物のストーブと一体化して、このスペースの「顔」になりました。週末 ここで ぬくぬくしながら小さな彼女と向き合う時間が、とても楽しみなこの頃です。