TARO賞展雑感


TARO賞展では、かなりじっくり作品を観てくれる人が多く、背中を押してもらいましたが、また別の反応もあって、それはそれで面白かったです。作品背後のソファに座って観察していると、会場に入って来るなり、私の作品を観て「気持ち悪い!」と呟く人が偶にいました。まあ仕方ないでしょう。それぞれの人が感じる「リアル」には温度差がありますから。対象の何をもって「人」と認証するかも皆違います。自分の感覚と比べて過剰なものに、殆どの人は嫌悪感を持ちます。岡本太郎のいくつかの絵の不協和な色使いを気持ち悪いと感じるのと一緒です。恐らくその人にとっては敢えて言わなくてもいいこと、或いは触って欲しくないところを、私が執拗に追求している様に感じたのでしょう。しかし発表する作品は、私にとって「リアル」の最低レヴェルであって、これ以下のものを人に見せるつもりはありません。私としては「気持ち悪い!」も褒め言葉の一つと受け取っていくしかなさそうです。

TARO賞展の準備作業の時は、周囲の一発芸的な作品やコンセプチュアルな主張の中で、正直「場違いなところに出品してしまった。」と思いました。が、会期が始まってみると、周り中似ても似つかぬ造形物ばかりで、かえって互いに干渉することもなく、まるで個展の様にそれぞれの作品と対峙できることに気づきました。そう考えてみると、これだけ好条件の公募展も珍しいと言えます。破格に広い一人当たりの占有面積(5mx5m)は、周囲の共有空間を含めると、100平米の展示スペースに匹敵します。無論天井の高さ(7m)は画廊の比ではありません。あまり下世話な言い方はしたくないのですが、この条件の会場を9週間借りるとなると、相当な金額になってしまいます。作品を並べさえすれば、後は会場の管理等全てお任せで、気が向いた時に顔を出せば良いなんて、平日仕事を休めない身にとっては理想的な展覧会です。終わった途端に言うのも何ですが、そして今回 最年長だった私にまたチャンスがあるかどうかはわかりませんが、できればもう一度挑戦してあの会場に別の作品も展示してみたくなりました。