熊谷守一展


スキー前に滑り込みで何とか年内に行ってきました。平日の夕方だったので、近代美術館も人が少なく、私にしては珍しく、かなりじっくり観て回りました。
古い作品は経年の暗色化が進んでしまって、絵が判別できないものもありました。特に「轢死」という、飛び込み自殺した女性を描いた、初期の重要な作品などほとんど真っ黒でしたが、じっと見つめているうちに、列車に引きちぎられて横たわる人体のフォルムが幽霊のように現れてきました。
赤い輪郭で区切られ、明るい色で塗り分けられた後期の絵が、相当考え抜かれて描かれているのには驚きました。もっと即興的な作品なのかと思いきや、かなり単純に見える絵を、守一は型紙やトレーシングペーパーで写し、同じ構図で何度も色を変えて試していました。歳をとってからは、ほとんどの絵を、私が使っているスケッチブックと同じ、F4という小さな画面で描いていることにも親近感を覚えました。
さて、埃が払われ、漆を塗られて綺麗になった熊谷守一像の方ですが、なかなかお迎えが来ませんでした。このごちゃごちゃの環境で年越しか?と思われた頃、ようやく引き取りの連絡があり、福島県の高齢者施設に帰って行きました。