春風萬里荘

2022年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 笠間日動美術館で久しぶりに昔の作品と対面した後、せっかくなので、同じ市内にある春風萬里荘にも寄ってきました。ここは北鎌倉にあった北大路魯山人の旧居を移築した古民家と庭園で、日動美術館の別館になっています。前の日までは殺人的な暑さで、いくら軒の深い茅葺の建物とは言え、エアコンなしでは耐えられるものじゃなかったと、受付の女性がこぼしていました。でも、この日は幸い朝から小雨模様で涼しく、とても快適でした。雨の合間を見て、庭から描いたのがこの絵です。

 邸内には魯山人の作品や収集品が展示してあります。トイレや風呂も含め、全ての部屋を自由に見学できる様になっていて、魯山人が自ら設計した茶室にも入れます。建物以外は何年か前に全面改修したらしく、昔来た時よりもずっと趣のある日本庭園になっていました。だからと言って、決してお高くとまっていないのが、またここの良いところです。スルメのついた竿を貸し出してくれて、ザリガニ釣りまでさせてもらえるのが傑作でした。そう言えば、この絵を描いている最中、ちょっと雨脚が強くなった途端に、なんと受付の女性の一人が傘を持って飛んできてくれました。風景も、人の気持ちも、まさに古き良き日本の原風景みたいな春風萬里荘なのでした。