鳴海織部鍵盤文四方鉢


2014年 高7.5cm、径26.3cmx25.5cm
 赤土と白土を繋ぎ合わせ、赤い面に白泥と鬼板で文様を描き、白土部分には緑釉をかけて焼いたものを「鳴海織部」と言います。この鉢は知人のピアニストに記念品として贈るために作りました。器の中にピアノの鍵盤、外側には五線譜をデザインしました。織部には、伝統の図柄にない、こういう絵でも違和感なく取り込んでしまう、懐の深さがあります。

 器もこれくらいの大きさになると、作るより上手に乾燥させることの方が難しかったりします。そのまま乾かすと、縁と底の乾きの差で簡単に割れてしまいます。元より白土と赤土では収縮率が違いますから多少の歪みは覚悟の上ですが、何とかひび割れを防ぐためビニールで覆ったりして、急激に乾燥させない工夫をします。

 そんな訳で、こっちは左上に小さな割れが入ったため没にしたものです。傷と言っても実用に差し障りはありませんし、何より奔放に流れた緑釉の形と色が面白く、割と気に入っています。とは言え、肝腎の鍵盤が碧い渦に呑み込まれて良くわからなくなってしまったので、プレゼント用としてはやはり作り直しました。