台について ①

 絵の印象が額縁によって変わるように、彫刻にとって、台は作品としての価値を左右する大切な要素です。おそらく作品台の重要性について、誰よりも自覚的だった彫刻家はブランクーシでしょう。ダチョウの卵のような単純な形が、考えぬかれた台によって、美しい彫刻になってしまうのです。ブランクーシアメリカでの展覧会に彫刻を持ち込もうとしたとき、税関で作品を工業製品と決めつけられて憤慨したという話があります。見方を変えれば、それぐらい無機的と思われる形にすら、命を吹き込む力が、ブランクーシの作品台にはあったということでしょう。

 私の作品「ブランクーシ」の台は、向かい合った四角錐が連続する彼の作品「無限柱」の変奏です。像との間には磨き上げた長円形の欅材を挟んでみました。この素材の異なる板が有るか無いかで、作品の印象は全く違ってきます。