私の修行時代 ①

 個展の期間中はどうしても過去に縛られることが多くなります。作品の整理や連絡などで忙しい上、いちいち過去の説明を求められるので、その度に新しい作品に向かうことから呼び戻されてしまいます。
 自分の作品に愛着がない訳ではないのですが、完成すると執着は消えて、せいぜい贔屓の一鑑賞者ぐらいになります。造った時の気持ちに完全に戻るのは難しい、と言うか不可能です。3年前の作品について語ることは、酔っぱらった時の言動を虚ろな記憶で弁明するような感じです。

 とは言え、きちんとしていない頭の中をときどき整理しておくことは必要です。よくよく記録を辿りながら思い出してみると、制作年が違っていたり、造った順が逆になっていたりもします。今後、どう、進(退?)化するかわかりませんが、この機会に、これまでの途中経過を記しておくことも無駄ではないかもしれません。
 ただの工作好きが昂じて、今なお作品をつくっているというのは、我ながらよく続いたものだと思います。生きるために必要なことでもないのに、なぜか止める気になりませんでした。私の美術の修業時代は、実は、そのまま社会人としての修業時代でもありました。