私の修業時代 ③

 もう一つ変わったのが教員というものに対するイメージです。正直に言うと、私はそれまで先生という人たちがあまり好きではありませんでした。自分が中学生時代に出会った先生達で魅力的と思える人はいませんでしたし、教員というのは、いつも不機嫌で、中途半端に専門的なイヌというイメージでした。しかし、先入観と実際とでは大違いでした。
 私が赴任した中学校も、あの数年間は大変な時期が続き、嫌気がさしたベテランの先生達はどんどん別の学校に転勤してしまいました。毎年のように新採用の教員が補充され、職員室の平均年齢はかなり下がっていたと思います。

 危機的状況の中、しかし実戦で鍛え上げられた若い力は確かでした。今もそう思いますが、中学校現場とはまさに社会の最前線です。本来、そこで不機嫌な顔をしている暇なんてありません。毎日、何かしら問題は起きましたが、若手教員達は、それぞれのキャラクターで生徒を引きつけながら、学校をぐいぐい前進させていました。
 あの頃を振り返ると、全く私は恵まれていたと思います。毎日のように先輩達に夕飯に連れて行ってもらい、フライングやファウルすら許される雰囲気の中で、少しずつチームに加わることができました。やはり、人は周りに育てられると言うか、環境に応じて育たざるを得ないところがあります。自分を頑なに押し通すよりも、周りに流された方が面白い場面はたくさんあるし、勝手に向こうから来てくれるチャンスも捨てたもんじゃないと思います。教員になってから数年間、作品づくりはほとんどできませんでしたが、それはそれで、私にとって大切な修行期間でした。