プロフェッショナルとアマチュアについて

 「プロとアマ」を「玄人と素人」と訳してしまうと、プロの方が技術的には一段上にいるように感じられます。しかし、その立場として見ると、professionalには職業専門家(=それで食っている、=それしかできない)という、幾分侮蔑的なニュアンスが含まれており、ヨーロッパでは貴族の趣味としてのamateurismが大事にされてきた経緯があります。
 市場経済原理に席巻されている今の日本で、アマチュアリズムはなかなか理解されにくい概念かもしれませんが、「数寄(すき)」の精神と思えば、何となくわかります。美術に限らず、世の中を広く俯瞰する態度なくして、面白いアイデアは生まれません。優れた文化は、無名の陶工によって たまたま捻り出されるものではなく、利休によって、そうあるべくして発見されるものです。

 それが美術作品である以上、技術的に水準を満たしていることは最低条件ですが、その上で作者の透徹した世界観が感じられるかどうかが、価値の分かれ目だと思います。
 こうしてみると、手がアマでは物足りないし、目がプロではつまらない。ジョッキー時代のディック・フランシスのように、アマチュアの立場で、技術的にはプロという身の置き方が理想なのかもしれません。
 私も、妥協することなく造形の腕を磨きながら、しかし、それを達観する素直なアマチュアの目はずっと持ち続けていたいものです。