テーマ『風貌』について ①

 書斎やレコード棚は持ち主を語りますが、作品ともなればそれ以上に作者の素性を暴いてしまうものです。私が誰を造るかということは、すなわち私がどこを目指しているかを表明することに他なりません。
 かつて今よりもっと自意識過剰だった頃、「表現の可能性」なんてものを信じて、軽蔑する政治家をゴミで作ってみようとしたことがありました。でも、途中で飽きてしまいました。その時、作品とは完成するまでずっとつき合う訳だから、やはり好きじゃないものは造れない、という当たり前のことに気がつきました。

 作品が写実的であることが大事だとは思いませんが、リアルであること、或いは迫真性を持っていることはとても大切だと思います。ただリアリティとは力づくで押しつけるものとは違います。主張する声の大きさやコピーの精度とはあまり関係ありません。
 鑑賞者は別に作者の解釈を拝聴したいわけではなく、無条件の共感を見たいのです。結局のところ、迫真性とは、対象に向かうひたむきさとか謙虚さのことなのかもしれません。