三月堂


2013年 25cmx34cm 紙、鉛筆、水彩
 東大寺の法華堂(三月堂)は、天平時代創建の左側部分に、鎌倉時代の右半分が増築されたユニークな姿をしています。やはり首から上が天平、下が鎌倉で有名な秋篠寺の伎芸天像と同じく、時代を超えた職人たちによる傑作コラボレーションと言えるかもしれません。向かって左側の「天平の甍」は、鎌倉時代部分の瓦に比べて、暖色系で柔らかな印象です。中央右側の垂木の並びがやや波打っていますが、描き損じた訳ではなく、実際にそうなっていました。
 さて、スケッチ成功のカギは、まず場面の切り取り方(アングル/トリミング)ですが、もうひとつ、絵に集中できる場所選びも大切です。これ位のサイズの絵を仕上げるには少なくとも2〜3時間かかりますから、その間、目の位置をずらさず、自然条件にも左右されない所を見つけなくてはいけません。どこで描くか、はその両方の要素から決める必要があります。
 今回は異常な暑さの中、直射日光を防がなくてはとてもスケッチどころではありませんでした。幸い真向いの四月堂が特等席を提供してくれました。三月堂を正面に見る位置にあり、ちょうど修復中で参拝客もいなかったので、軒下の基壇に座ってじっくり描くことができました。とは言え、外国人観光客に冷やかされながら、ようやく絵が完成した時、腰や背筋は痺れて固まり、喉は痛い位カラカラでした。