小像制作 ①(ジャコメッティ)

 3学期の始業日に思い立って、と言うより何かせずにはいられなくなって、新作に取り掛かりました。

 ジャコメッティがスイス・スタンパにある母親の家で、机に向かって彫刻しているカラー写真があります。四本脚の丸椅子に背筋をのばして腰かけ、机の上の細長い作品に粘土で肉付けしています。別に鬼気迫る制作風景とかではなく、故郷で気楽に小品を造っているところなのですが、それでも独特の緊張感が部屋を支配しているようです。これまでにジャコメッティをモデルにした半身像を大小4体造りましたが、今回は座って制作している場面を小さいサイズの全身像にしてみようと思います。

 全体の構造を大まかに竹とベニヤで組み、麻布で固めながら形にしていきます。芯は乾くまでの間、変形を防いでくれさえすれば充分です。

 大きな喪失感や強い抑圧が表現活動のきっかけになることもあります。自己防衛機制の「昇華」と言えば聞こえはいいですが、「逃避」や「転移」とも近いかもしれません。しかし、自分を腐らせない為に、何はともあれ行動開始することが重要です。毎日、深夜まで絵画や彫刻を造っては壊し、『絶対の探求』を続けたジャコメッティを見つめることは、私にとって写経にも似ています。そう言えばアルベルト・ジャコメッティが亡くなったのは47年前のちょうど今頃、1月11日のことでした。

 大まかな形が決まったら、一気にモデリングをしていきます。↑この段階で、カメラのオートフォーカス機能が顔認識をしたのには驚きました。

 顔や手の表情をつけていくと、少しづつジャコメッティらしい姿が表れてきました。ここまでで、だいたい十日間です。