木彫時計⑧クワガタ


2012年 直径24cmx厚さ1.4cm 桂板、漆
 今年は夏らしいデザインにしてみました。広島に住んでいた小学生の時、夏になると毎日のように山のクヌギの木に通いました。ある日、学校から帰ってすぐ、例によってお気に入りの木の所に行くと、根元の穴の中にヒラタクワガタが溢れかえっています。「なんだこれは?」と思いながら中を覗くと、大きな影が見えたような気がしました。恐る恐る手を入れた次の瞬間、人差し指に激痛が走りました。悲鳴を上げて引き出してみたら、なんと初めて見た巨大なオオクワガタが刺さっていました。しかもオスはメスを抱きしめていたのです。嬉しいやら痛いやらで、指につがいのクワガタをぶら下げたまま、跳んで家まで帰ったのを覚えています。
 さて、この時計は、知り合いの新築祝いにするつもりなのですが、漆が乾かないので、なかなか届けることができません。まだ電車にしか興味がない男の子が、そうこうしている内にクワガタにも関心を持ってくれることを期待しつつ、何とか秋までには渡したいと考えています。