表現と工芸について ②

 だいたい「美術=自由」という発想自体、とんだ勘違いでした。あらゆる制約から自由な作品になど、今は何一つ魅力を感じません。もちろんつくることは勝手ですが、それが果たして、見る価値や使う価値を持っているかと言えば疑問でしょう。作品として発表する以上、「好き放題やりました。どうぞ見てください。」というわけにはいかないのです。

 私は彫刻や絵画に取り組むとき、最低限、自分が見たいものを造ることを心がけています。同様に陶芸や木工については、自分が欲しいものを作ろうとしています。やりたいことを衝動的にやっているうちは、まだまだ子供と言わざるを得ません。「表現」という魔物につけ込まれないためにも、一歩下がって、本当にこの作品が歓迎されているのかを確かめながらつくっていく必要があると思います。    −終−