ジャコメッティ


2006年 155cmx53cmx60cm(台座含む 像高103cm)
麻布、樹脂、油彩、柿渋、陶、大理石、木
 リアルな形を求めて削るうち、彫刻が小指の先程になり、終いには無くなってしまう、ということを繰り返して、ジャコメッティは細長い彫刻に辿り着いたというのが定説になっています。つまり、彫刻が無くならないように、高さだけは固定した結果、というわけです。本人が言っているのだから多分その通りなのでしょうが、加えて、ジャコメッティという彫刻家独特のものの見方が、必然的にあの形をつくったのだとも思えます。
 ジャコメッティという人は、その恐ろしく立体的な顔が物語るように、モデルに対しても、過剰なまでに前後の幅(立体感)を意識して、作品をつくっています。彫刻に限らず、絵画作品でも、必ずと言っていいほどモデルを正面から描きながら、細かい等高線で区切って立体的に捕まえようとする彼の意志が見て取れます。両眼で〜右眼でモデルの左の横顔を、左目で右の横顔を〜はさみつけて、潰してしまったかのような人物像は、しかし、とても魅力的です。