不忍池の蓮

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2021年 22.5cm×16cm 紙、鉛筆、水彩

 この夏最後の平日休み、上野に「イサム・ノグチ展」を観に行きました。従順に言いつけを守っていたつもりはないのですが、夏休み中、(学校以外は)ほとんど行く所もなかったので、久しぶりの娯楽と言える外出でした。上野公園に着くと、噴水の周りの広場で空を見上げて突っ立っている人が大勢います。この日はたまたまパラリンピック開幕の日に当たっていたらしく、皆ブルーインパルスの飛来を待っていたのでした。せっかくなので、私も紛れて当て所もなく眺めていると、しばらくして東側の木々の上ギリギリのところを長く尾を引いた編隊が静かに通過して行きました。もう少し近くで迫力ある飛行が観られるかと期待していたので、ちょっと拍子抜けでした。

 さて、スマホで慣れない日時指定券まで取っての「イサム・ノグチ展」でしたが、ゆったり観られるかと思いきや、人が多すぎて落ち着きません。1,900円も払ったのに、20分位で(追い立てられる様に)出てしまいました。でも、せっかく久しぶりに遠出をして、このまま帰るのも癪だったので、その辺をぶらぶら歩いてみることにしました。別に絵を描こうと決めていた訳ではないのですが、不忍池でハスを見た瞬間に、「ああ、これだ。」と感じました。自分の奥にあった何かが湧き上がってくる様な不思議な感覚でした。暑い池の端のベンチでスケッチしながら、その理由に思い至りました。高田公園です。上越の8月と言えば、高田城址の堀を埋め尽くす蓮が名物でした。他所から訪ねて来る人があると、自分が初めて来た夏を思い出しながら、必ずここに案内したものです。上野で絵を描きながら、「ここ」は今、上越になっていたのでした。