惣滝


2015年 22cmx27cm 紙、鉛筆、水彩
 職場の仲間と或る晩思い立って、妙高奥座敷、燕温泉に行ってきました。夜中の誰もいない露天風呂では、時々雲の切れ間から星空がのぞき、天の川や流れ星も見えました。20年以上前、まだ道路が舗装されていなかった頃はちょくちょく出掛けましたが、その後温泉ブームで観光客が増えてから脚が遠のいていました。今回、我々三人だけで無人の湯を堪能できたのは素晴らしくラッキーでした。
 明け方まで雨が降っていましたが、朝6時には綺麗な青空が広がったので、沢沿いを20分程登って惣滝(そうたき)を観に行きました。途中の道は滑りやすく、落石も多いので、ひとつ間違うと谷底に真っ逆様です。滝の近くでもあちこちから硫黄臭い温泉が湧いています。標高が1000メートル以上あるので、座って絵を描いていると体が冷えてきますが、そんな時手足だけでも近くの白っぽい湯に浸すと少し寒さが和らぎます。
 砥石のように鋭い岩肌が木々の緑を裂くように隆起し、その真ん中を割るように水が落ち続けています。これ以上近づくことができないのであまり大きく感じませんが、看板によると滝の落差は80メートルあるそうです。時々風に乗って飛沫が顔にかかります。描きながら、そう言えば昔もここでスケッチしたことを思い出しました。その絵は今、手元にありませんが、ちょっと比べてみたい気もします。恐らく前回もそうしたはずですが、絵具を溶くのに温泉雑じりの川の水を汲んで使ったので、微妙に現地の香りがする絵になりました。