私の修業時代 ④

 ようやく自分の作品らしきものができるようになったのは就職して10年以上過ぎてからでした。多分、私は子供の頃から、絵を描くより、立体的な工作の方が好きだったのですが、美大に進もうと思ったとき、何となく勢いで絵画コースに流れ込んでしまいました。もちろん、それはそれで楽しく、やり甲斐のあるものでしたが、教員になってから、時間を捻出して描くようになると、だんだんつまらない絵ばかりが増えていきました。コンクールで目立つことを狙って、あれこれ詰め込みすぎたり、デフォルメがわざとらしかったり、結果的に自分が決して見たいと思わない絵を描くようになっていました。

 ある時、友人から、レストランに吊すサンタクロースを頼まれたことがきっかけで、私の立体制作は始まりました。やってみると、これが面白くて、(そのころ私にとって、絵を描くことは苦行でした。)瞬く間に作品がたまっていきました。
 人間、自分の立ち位置を俯瞰して、ようやく身の丈に合った仕事ができるのかも知れません。私の場合、友人のお陰で元々の工作少年に戻り、一時、絵から離れたことがよかったようです。「麻でつくる−村上 力」の原点は、何を隠そう、張り子のサンタクロースだったのです。