『麻でつくる』彫刻技法について ①

 布を貼り重ねて立体を成形する方法はカルトナージュと呼ばれ、造形の自由さから色々なところで利用されてきました。骨折したときのギプスなんかもそうです。古代エジプトには亜麻布を石膏で固めたミイラの棺がありました。
 私の作品は麻布と漆を使う点では、日本の脱活乾漆像に近いかも知れません。彫刻内部が、必要な骨格以外、空っぽであることも同じです。天平時代に造られた興福寺の阿修羅像が現代まで形を保っているのは、造像技術の高さや漆の耐候性のおかげですが、もうひとつこの『空洞』ということが、実は大きなポイントでした。つまり火事に遭っても運び出すことができた、その軽さが阿修羅の命を救ってきたとも言えるのです。
 私の作品「平櫛田中」は身長160cmです。像を自立させるために木や金具も使っていますが、重量は19kg(因みに阿修羅像は高さが153.4cm、重さ14.85kg)です。身長160cmの人の平均的な体重が50kgであることを考え合わせると、かなり軽量であることがおわかりいただけると思います。