六窓庵

2024年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 上野の国立博物館で開催中の「本阿弥光悦展」に行ってきました。平日の朝ゆえ混雑もなく、ゆっくり観て回ることができました。あちこちの美術館で光悦作品が公開される度に私は足を運んでいるので、今回 初対面のものはあまりなかったとは言え、これだけまとめて展示されるとやはり見応えがありました。それにしても入館料が上がっていたのには驚きました。円安下での2100円というのは、外国人観光客にとって何でもないのかもしれませんが、円しか持たない庶民には高い。つい元を取ろうとして、本館から庭園までじっくり観覧してしまいました。

 この日は天気が良かったので、庭めぐりも快適でした。ほとんど人のいない小径を茶室など観て歩きました。ここでの一番の危険はたくさんいるカラスです。あちこちに盛大な爆撃の跡があります。不用意な場所で止まってスケッチでもしていたら、必ずやられてしまいそうです。その点、六窓庵というこの絵の茶室には、お誂え向きの待合がありました。上空からの攻撃を遮る屋根の下、優雅に腰掛けて絵を描くことができました。ちょっとだけですが、高い入館料の仇が取れた気がします。

へぎそば屋

2024年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩、雪

 急に思い立って独りでスキーに行く途中、十日町の由屋に寄りました。上越地方は大雪予報が出ており、道が混むことも想定して早く家を出たのですが、思いの外順調で開店より30分も前に着いてしまいました。しばらく車の中にいましたが、エンジンをかけっぱなしにしておくのも迷惑なので、外に出てスケッチしてみました。建物の背景は、空も地面も真っ白で何ひとつ見えません。地面の雪で絵具をとき、筆と鉛筆で描いていると、小さなスケッチブックの上にどんどん雪が積もってしまい、なかなか形になりません。15分ぐらい経ったところで、「寒いでしょう。」と開店時刻前に中に通してもらいました。トイレにも行きたくなっていたので、助かりました。他の客が誰もいない由屋の蕎麦と天ぷらは相変わらず最高に美味く、お陰で午後は元気に滑ることができました。コロナのブランクを挟んで、なんと5シーズンぶりのスキーでした。道理で下手になるわけだ。

作品搬入・設置

 第27回TARO賞展の搬入・展示作業が始まりました。美術館に運び込んだ時はご覧の様なカオス状態です。ここから2日間、制限時間内で設営を全て終えなければなりません。

 当たり前のことですが、作品というのは、ただつくるだけでなく、展示場所まで運んで組み立てて、初めて形になります。今回の作品はこれまでになく大きかったので、輸送に関わる諸々がとにかく面倒でした。トラックの手配、積載の段取り等、肉体的疲労は勿論、気苦労が多く、「もうイヤだ!」とへとへとになりながらの搬入作業でした。お陰で、人間的には少し成長したかもしれません。美術展で他の人の作品を観る時、造形としての出来はどうでも、「これ運ぶの大変だったろうな。」と素直に感心したり、共感できる様になりましたから。

 何とか無事に設営を終えて、あとはいよいよ開幕を待つばかりとなりました。今年のTARO賞展は2月17日(土)〜4月14日(日)です。是非会場に足を運んで、悪戦苦闘の跡をご覧ください。

 周りを片付けてふと振り返ると、(これから他の作家が展示する)真っ新な壁面に、私の作品の影が映し出されていました。

 

雷門

2024年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 近くまで行く用事があったので、正月の浅草に寄ってみました。松の内は過ぎていましたが、コロナの規制もなく、おまけに円安なので、雷門前は修学旅行生に加えて外国人観光客でごった返していました。通りを挟んで向かいに、T字路の中央分離帯があります。横断歩道の真ん中の花壇が道路より一段高くなっていて お誂え向きだったので、そこから描きました。門の右隣は交番ですし、いつ また「そこはダメだよ。」と言われるかわからなかったので、30分でさっさと仕上げて退散しました。

 せっかく来たから、懐かしの亀十でどら焼きでも買って帰ろうと思ったら、大行列でした。スケッチより長い時間並んで、ようやく店に入れました。まさかこんなことになっているとは知りませんでした。ネット口コミ時代の人気土産をちょっと舐めていましたね。

乙女峠からの富士

2023年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 12月半ばに日帰りで箱根までドライブしました。別に計画していた訳ではなく、岡本太郎美術館に打ち合わせに行った後、駐車場から見えた富士山に釣られて、何となく行ってしまいました。ずっと下道で、奇しくも箱根駅伝コースを辿るツアーでした。

 湯元からの対向車線が混んでいたので、同じ道を戻る事は諦め、仙石原から御殿場に抜けて、高速道で帰ることにしました。途中休憩しようと乙女峠に寄ってみると、昔の富士見茶屋がいつの間にか新しいカフェに変わっていました。せっかくなので鐘のある展望台まで登って、夕方の富士山を描いておきました。裾野には御殿場市街が広がっていました。