正福寺千体地蔵堂

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2021年 25cm×33cm 紙、鉛筆、水彩

 全国の都道府県の中で、保有するする国宝の数が最も多いのは東京都ということは知っていました。しかし、建造物に限って言えば、その数はたったの2つで、しかも2009年に国宝指定された迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)なんて一般人には余り縁のない場所と言わざるを得ません。そして、残る一つが東村山にあるということをつい最近知り、早速訪ねてみました。

 事前予約と高い参観料が必要な迎賓館に比べて、この正福寺は太っ腹です。拝観料なんてケチなことも言わず、ご覧の様に国宝の千体地蔵堂が、雨にも負けず風にも負けず、堂々と姿を晒し続けています。さすがに内部拝観できるのは年に数回だけですが、室町時代の禅宗様建築がいつでも360°どこからでも観られるのは、恐らくここだけでしょう。

 この地蔵堂と同じ時代に同じ様式で建てられた、鎌倉の円覚寺舎利殿は社会科の教科書に載るぐらい有名ですが、常時公開されてはいません。いつも門で閉ざされていて、私も実物を観たことがありません。それに引き換え、正福寺のこのお堂は毎年11月3日に地蔵祭が開催されるなど、地元に密着し、ずっと大切にされてきました。人々の信仰と手入れによって、奇跡的に保たれてきた現役の国宝建築物がこんな近くにありました。