竹田城跡

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2019年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 七夕の日、あさご芸術の森美術館まで作品搬出に行ってきました。

 その前に日本芸術会館でも作品をひとつ引き取る予定があったので、5時前に家を出て、まずは神戸に向かいました。日曜早朝の道は渋滞もなく、すんなり開店に間に合ったので、そのまま10時からフロインドリーブでブランチと洒落込んでみました。90年前に建てられた教会を改装した2階は、開放的で実に感じが良く、これは少々無理をしてでも、入る価値のあるカフェでした。

 ポートアイランドで「マタイ」を積み込んだ後、今度は播但道を北上して、あさごに向かいます。美術館で15時からギャラリートークが予定されていましたが、少し余裕があったので朝来ICを通過し、竹田城跡に寄ってから行くことにしました。

 室町時代に築城され、関ケ原の役以降廃城となった竹田城は、高さ353mの山頂に築かれた山城で、現在はその石垣だけが遺っています。穴太衆(あのうしゅう)の石積み技術は素晴らしく、他の人工物が一切残っていない山頂に、石垣だけが400mに渡って続く景色は、日本のマチュピチュと呼ばれるだけのことはあります。観光案内のキャッチフレーズは「天空の城」ですが、確かに周囲に雲海が立ち込めた中の竹田城は、あの「ラピュタ」を彷彿とさせます。

 現在は、観光客増加に伴い、中腹に駐車場を増設し、入場料を払って一方通行の順路を回る方式になりましたが、まだあまり知られていなかった頃は、暗い内に山頂直下の駐車場に停めて登り、石垣の上から夜明けの雲海を見下ろすことができました。朝日でピンクと青紫に染まった雲中の城は、この世の物とは思えない程の絶景でした。

 数年前、城ブームが来て、あさごが知られるようになったのは良かったのですが、観光客を捌くために順路にシートをかけたり、杭を打ったりした結果、少々味気なくなったのは確かです。石垣維持のため、入場料を取るのは仕方ないとしても、ならば尾瀬の様に木道を掛けるとかすれば良かったと、以前 行政で竹田城に関わってらしたMさんが嘆いていました。大勢の足で踏み固められて根を張れなくなった山頂の松は次々に枯れ、もう昔の景観に戻すことは難しいそうです。

 とは言え、古代遺跡の様な城址がとても貴重な文化財であることに変わりません。なにより、私は石の彫刻をたくさん観てきましたが、竹田城より感銘を受けた作品にはこれまでお目にかかったことが無いと断言できます。この辺り独特の肌色がかった岩で組み上げられたアートは、とにかく実際に登って、その場で体感してみないことには始まりません。

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 さて、岩と言えば、今回 城址の登り道の途中で面白いものを見つけました。向こう側の崖に乗り出すように留まっている巨岩です。受験生のお守りとして紹介しておきます。

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  思いの外 寄り道が長引き、あさご芸術の森美術館に着いたのは16時ちょっと前でした。ギャラリートークには遅刻して何とか参加しました。まさかあんな大勢の前で話すことになるとは思ってもみませんでしたが。その後の大宴会で、各地から集まった造形作家たちと旧交を温めたことは、言うまでもありません。結局、神戸から始まった、恐ろしく密度の濃い1日が終わったのは、予想通り真夜中過ぎでした。